遺言 2017.12.01

遺言書は法定相続人に優先する?それはなぜ?

相続が起こったとき、すなわち、大切な家族等が亡くなったとき、遺産が発生することがあります。ある程度の資産がある家族なら、相続については真剣に考えることだと思います。そこで自分が長男だった場合などには、法定相続人なのですべて相続できると思いがちです。しかし実際のところは、遺言書は法定相続人に優先してしまいます。詳しく見ていきましょう。

記事ライター:nexy編集部

なぜ?遺言書が法定相続人より有利な理由

一昔前までは、家の相続といえば、親が亡くなったら長男がすべて継ぎ、次男や三男は何も相続しないというパターンが多かったのです。しかし、子供の数が減り、高度経済成長時代を経て、今はそのような長男全取りの風習は、特に都心部でほとんどなくなってきました。

しかし、そんな長男の相続よりも強い効力があるものがあります。それが、遺言書です。長男がすべて相続すると言った昔の習慣は、あくまで慣例でしかありません。

遺言書は、民法で定められた規定で、法的拘束力があります。家庭裁判所で認められるフォーマットで書かれているものや、公証人役場の証人の元で書かれた遺言書なら、故人の遺志が認められます。

そして、その次に重視されるのが、法定相続人です。

法定相続人は、妻、子、子供がいなければ親、親もいなければ兄弟姉妹と、一般的に家族を構成するメンバーに相続権が渡ります。

遺言書が民法で認められているのは、故人の意思を重んじるという大切な原則があるからです。これを権利能力平等原則と呼びます。法のもとに人はみな平等で、持っている権利に大きな差はないということが根本にはあると言われています。

それと同時に、私的自治という原則もあります。これは個人の意思を大切にするということで、これが自由を重んじる日本の国の中で重視されている価値観なのです。

 

法定相続人はどうすればよい?

財産を持っている人は、自分で作り上げた財産ですから、それをどのように使用しようと個人の自由です。生きているときは自由に使うことができるのであれば、死後も自由に処分できるはずであるという原則があります。これを書面でしたためたものが、遺言書です。

では、法定相続人は一体どうすればよいのでしょうか。法定相続人は、相続の際に遺言書に従わなくてはなりません。遺言書を捨てたり、隠したり、守らなかったりした場合には罰せられます。

 

効果的な遺言書の作り方

相続発生時のトラブルを避けるためにも、被相続人は生前に、公証人役場などで遺言書を作っておくと良いでしょう。

法定相続人は家族構成によって決まります。しかし、被相続人の中には、いくら家族間だとはいってもお金目当てで自分に親切にしたり、仲違いしたりなどでトラブルになっているケースもあることでしょう。

そんなとき、自分の財産を好ましく思っていない家族に残したくないので、それならばいっそ寄付してしまいたい、という使い方もできるのです。民法で定められた国民の権利ですから、権利を行使することで、遺言書を使って法定相続人以外に財産を残すことができます。

そのためには、遺言書についてしっかりと学んでおく必要があります。遺言書は、パソコンでの作成や、ビデオなどの映像の作成はダメで、紙に書いておく必要があります。

日付はしっかり書かなくてはなりません。また、記名や押印も当然必要です。具体的な表現を使って、謄本などを見ながら不動産を書いていきます。預貯金等は口座名までしっかり書いて、誰々に譲るということを記載してください。

また、遺言書では法定相続人の遺留分についてもしっかり考えなくてはなりません。遺留分とは、法定相続人に与えられた最低限の遺産を相続できる権利です。遺言執行者の弁護士などを指定しておくとより有効です。

書き換えられたり、捨てられたりするリスクを下げるために、封筒に入れて封をしっかりしておく必要もあります。また同時に、死亡時に見つからなければ意味がありませんので、わかるところに保管しておくことも大切です。

法定相続人もまた、民法で認められた家族の権利です。日本の法律は家族単位で出来上がっており、法的な婚姻関係と、その間に生まれた子供や孫には、法定相続人の権利があります。

しかし、法定相続人における相続よりも遺言書による亡くなった人の意思が尊重されるということを、相続について学ぶときには知っておかなくてはなりません。これはとても大切な民法上の決まりです。

なお、相続発生時のトラブルを避けるために、遺言書には自分がなぜ法定相続人のルールよりも遺言書を残して配分を決めるのか、しっかりその背景や心情なども書いておくと良いでしょう。

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