贈与・生前贈与 2017.12.30

生前贈与と贈与税の税率について

財産を生前贈与によって少しずつ分配しようと思う場合は、生前贈与の贈与税の税率を考慮する必要があります。贈与する財産によって税率は違いますが、適用できる控除も違ってきます。

この記事では、生前贈与の税率はどれくらいかかるのか?生前贈与をする際に利用できる控除にはどんなものがあるのか?など、生前贈与にまつわる疑問の答えを解説していきます。

記事ライター:棚田行政書士

生前贈与とは

現金や株式、不動産など多くの財産を持っている人が、生前に財産を贈与することを生前贈与と呼びます。財産を渡す人がまだ生きているうちに生前贈与することで、渡す人自身の意思を完全に反映した方法で財産を渡すことができます。

生前贈与をしない場合は、死後に「相続」という形で財産が分配されることになります。相続の場合、遺言があるとしても親族間で争いが起こることが多く、必ずしも故人の意思を反映した方法で財産が分配されるとは限りません。そのような意味でも、生前贈与には利点があるのです。

生前贈与する場合、贈与する財産には贈与税が課されます。財産の種類や金額によって、贈与税の税率は異なります。なお、贈与税の税率は、相続税の税率よりも高く設定されています。

贈与税の計算は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産を合計し、合計金額から贈与税の基礎控除額110万円やその他の控除分を差し引き、残った金額に贈与税税率をかけます。

贈与される金額が大きいほど高い税率となり、最高では55%の税率となります。

 

贈与税の税率

贈与税の税率を表の形式で紹介します。生前贈与の贈与税の税率には2種類があります。

直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者へ贈与した場合に適用される「特例税率」と、特例税率に該当しない贈与に適用される「一般税率」の2種類です。

「特例税率」

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 無し
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円~ 55% 640万円

 

「一般税率」

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 無し
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円~ 55% 400万円

 

生前贈与で、贈与税をかけずに贈与する方法

贈与する金額が大きくなると、相続税の税率よりも割高な税率が生前贈与に課されてしまいます。しかし、控除を上手に活用することで、贈与税を課されないで贈与する方法があります。そのうちの5つをご紹介します。

1.贈与税の基礎控除額内での生前贈与

贈与税には基礎控除があり、生前贈与を受ける人1人当たり年間110万円までは非課税で生前贈与が可能です。ただし、毎年基礎控除ギリギリの額を現金で贈与し続けると、最初からまとまった金額を生前贈与する予定だったと見なされ、一括して贈与税を課される可能性もあります。

生前贈与を110万円以上行いたい場合は、現金だけでなく貴金属や不動産、動産、株式など財産の種類を毎年変更するなどして贈与するなら、後になって贈与税を課される可能性は低くなるでしょう。

また、贈与契約書をその都度作成して保管したり、あえて基礎控除額を超える贈与を行ったりして申告することも有効な対策となります。

2.相続時精算課税制度の特例

この制度では、60歳以上の親または祖父母から、20歳以上の子供または孫へ生前贈与する場合、最高で2,500万円までが非課税とされます。贈与する財産の種類は限定されていません。

相続時精算課税制度を利用して生前贈与された財産については、相続が発生すると相続財産に加算されてしまいます。しかし、贈与された当時の評価額で計算されるため、骨とう品や株式など、年数を経るごとに価値が高くなる可能性があるものを贈与する際に適した方法でしょう。

他方、建物や高級車などの年数を経るごとに価値が下がる財産は、相続時精算課税制度で贈与すると相続時に大きな損となる可能性があります。

3.配偶者控除の特例

配偶者へ生前贈与する場合も110万円の基礎控除は有効ですが、一定の条件を満たす不動産を生前贈与する場合には最高で2,000万円までの多額の控除があります。

正式に結婚している夫婦で婚姻期間が20年以上であることや、贈与する財産の種類は国内の居住用不動産に限ること、同じ配偶者からの控除適用は一回のみ、などの条件があります。

4.住宅取得資金贈与の特例

子供や孫が住宅を取得する場合や改築する場合に、その資金として生前贈与する場合の特例です。取得する住宅の種類によりますが、最高で1,200万円の控除があります。この贈与で得た財産は、相続時にも相続財産に加算されることがありません。

父母や祖父母からの贈与であることと、贈与を受ける子供や孫は20歳以上である必要があります。

 

まとめ

生前贈与を行うときは、税率に注意しましょう。生前贈与の贈与税率は相続税率よりも高いですが、各種控除を活用することで、節税しながら生前贈与することも可能です。

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