遺産相続・遺産分割 2017.11.08
二次相続を考慮した遺産分割の方法
相続が発生し、遺産分割を行うときには、二次相続のことまで考えておいた方がよい場合があります。ここでは、二次相続について考えて遺産分割しなければならない理由や、二次相続を考慮した遺産分割の具体的な方法について説明します。
なぜ二次相続が問題になるか
二次相続とは
二次相続は、家族の1人が亡くなって最初の相続が起こった後、別の家族が亡くなって起こる二度目の相続です。二次相続というときには、通常、夫婦の片方が亡くなった後、もう片方が亡くなる場合を想定しています。夫が亡くなったときの相続が一次相続であれば、妻が亡くなったときの相続が二次相続ということになります。
相続は一度で終わりではない
相続が起こった際、ある程度の財産があれば相続税がかかります。相続税は金額が大きくなることが多いですが、遺産分割の仕方を工夫することにより、負担を軽くすることも可能です。
しかし、目の前の相続についてだけ相続税を少なくすることを考えていても、意味がないことがあります。別の家族が亡くなれば、再び財産が動くことになり、ここでも相続税が発生します。最初の相続については相続税を減らすことができても、その後の相続で支払う相続税が増えてしまい、トータルでの負担がかえって大きくなることがあるからです。
つまり、相続が起こったときには、その後に続くことが想定される二次相続についても考えて遺産分割を行うことで、はじめて有効な節税対策ができるということです。
二次相続で相続税の負担が大きくなる理由
一般に、二次相続では一次相続に比べて、相続税の負担が大きくなってしまいます。それは、次のような理由からです。
相続人の数が1人減るので基礎控除額が小さくなる
相続税には、次の計算式で算出される基礎控除があります。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
上の計算式でわかるように、基礎控除額は法定相続人の数が増えるほど大きくなります。二次相続では、法定相続人の数が減ることになるため、基礎控除額が小さくなってしまいます。
たとえば、父、母、長男、次男の4人家族で、最初に父、次に母が亡くなったケースを想定してみましょう。
父の相続では法定相続人は母、長男、次男の3人ですから、基礎控除額は
3000万円+600万円×3人=4800万円
となります。
その後の母の相続では、法定相続人は長男、次男の2人となり、基礎控除額は
3000万円+600万円×2人=4200万円
となります。
これを見るとわかるように、父の相続では4800万円まで相続税がかからなかったものが、母の相続では4200万円を超えると相続税がかかってしまうことになります。
配偶者の税額軽減が使えない
被相続人の配偶者は、配偶者の税額軽減制度により、相続税額が大幅に軽減されます。具体的には、配偶者が相続した財産が1億6000万円以下または法定相続分相当額以下の場合には、配偶者の相続税納付額はゼロになります。
一次相続では配偶者の税額軽減制度が使えますが、二次相続では配偶者は既に亡くなっており、配偶者の税額軽減制度は使えません。二次相続ではその分相続税の負担が重くなってしまいます。
小規模宅地等の特例が受けられない
一次相続では、同居している配偶者が自宅を相続すれば、小規模宅地等の特例により自宅敷地の評価額が大幅に減額します。二次相続で別居している持家のある子が自宅を相続する場合、小規模宅地等の特例が受けられず、自宅敷地の評価額が大きくなってしまいます。
二次相続対策のポイント
夫婦と子がいる家族で一次相続があった場合には、二次相続の際に起こり得る問題を考慮して遺産分割を行うべきでしょう。どのような対策をすべきかについては、税理士等の専門家に相談するのがおすすめです。一般的には、次のような対策が有効と言われています。
一次相続の際の配偶者の相続額を減らす
一次相続の際に配偶者に多く相続させてしまうと、一次相続での相続税の負担は軽くなりますが、二次相続で子にかかる相続税の負担が重くなってしまいます。一次相続の段階で、子に相続財産を多めに移転させておくことで、トータルの相続税額を減らせる可能性が高くなります。
一次相続で配偶者が取得する財産を現金化
一次相続で配偶者が取得する財産を、現金や預金などの換金しやすいものにしておくと、二次相続の際の納税資金を確保しやすくなります。
一次相続で残された配偶者が生命保険に加入
夫が先に亡くなった場合、残された妻が元々持っていた財産や相続した財産の中に現金がある場合には、子を受取人とした生命保険に加入しておく方法もあります。生命保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があり、相続財産を減らすことができます。さらに、子は生命保険金を受け取ることで、二次相続の際の納税資金を確保できます。
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