遺言 2017.12.02
相続人の立場からみた、遺言書の考察
「高齢の親がいて当然長生きはしてほしいが、そろそろ相続問題を考えておかないといけない」と思ったものの、「どう考えても兄弟間での遺産の分割がうまくいきそうにない。しかし、相続人の立場なのに遺言書を書けとも言いにくい」といったお悩みを抱えている方もいるかもしれません。
この記事では、このようなときに役立つ相続人の立場から見た遺言書についてのアドバイスをいたします。
相続人から見た遺言書の効果
相続問題は一旦、相続人の間でこじれるとなかなか解決しないといわれます。
例えば、家を出た次男は当然農業をしません。しかし、財産が家と農地しかないから、次男の相続分を減らすと言われても、二男はどうにも納得できません。結果、次男は土地を売ってお金にしろといい、長男と残った親御さんは農業を続けたいと言う袋小路に陥ります。
このようなことは事業承継にも当てはまります。
商売が苦手な長男が、単に社長の地位がほしいからと会社を継ぎたがりました。それが叶わないとみると、相続した株式を赤の他人に売り払ってしまって大変な騒動になってしまう……といったことは実際に起こりえます。
このような事態を事前に予防するため、親御さんが元気なうちに、遺言書を書いていただいてはいかがでしょうか。
遺言書は本人の意思で書くものである
親亡き後にそなえて、遺言書を相続人が働きかけて書いてもらうといったことは、実際よくあります。よくある事象として見られるのが、同居している親族が自分に都合の良い内容の遺言書を書かせるというパターンです。
しかしながら、これでは本来の遺言書の趣旨と違ってしまいます。後のトラブルを防止するために書いていただくのであれば、遺言書は相続人の意思を反映するのではなく、あくまでもご両親の意思で書いていただくべきでしょう。
遺言書を作成することから相続人が得られる効果
①資産を形成した本人の意見による遺産分割のため、遺言の内容に相続人間で多少異論があっても、うまくまとまることが多い。
②遺言を書く上で、相続人である子供たちのことを一番よく知っている父母の目から見た視線で作成するため、公平ではないかもしれないが良い結果になりやすい。
③生前に相続税について考える機会を持てるため、生前整理や、数々の相続税対策を行うことができる。まだ親御さんが健在だからこそできる相続税対策を利用することが可能。例として、下記の制度を参照。
- 相続時精算課税制度の特例
一定の条件の相続人に対する贈与税に対する2500万円までの非課税枠あり。 - 住宅資金贈与の特例
一定の相続人が購入する住宅に関する贈与税で、最大3000万円までなら非課税。平成31年3月31日までの特例。 - 結婚子育て資金贈与の特例
一定の相続人が結婚・子育てに対して必要になる資金の贈与。平成31年3月31日までの特例。
遺言書を書いてもらう方法
親御さんに相続人が遺言書を書いてもらおうと思った時、一番難しいのは話の切り出し方かもしれません。「もうすぐ私が死ぬかと思っているのか?」と、親御さんに思われないか心配になります。ここでは、その難問に対するアドバイスをいたします。
遺言書セミナーや、エンディングノートセミナーを利用する
探せばいろいろと実施されているのが、自治体などで行われている遺言書セミナーです。市の職員や、○○相続センターなどが遺言書の説明を行っています。ここでは専門の先生が、うまく遺言書の必要性をお話してくれます。親御さんに一緒に行こうと、うまく説得してみるのも良いでしょう。
開催日程や開催場所を調べるために、市の広報を見たり、インターネットで調べてみたりするのもいいでしょう。そして、親御さんに「こんなことがやっているよ、一緒に行ってみない?」と誘ってみましょう。
ダイレクトに頼んでみる
テレビ等で遺産騒動の話が出たときにすかさず、「うちはこんな騒動はごめんだから、遺言書を書いてほしい」と頼んでみましょう。意外と親御さんも相続人のために遺言を書いた方がいいと思っていることが多く、いいきっかけになります。
まず、相続人自身が書いてみる
まずはエンディングノートからで構いませんので、相続人が書いてみましょう。相続人ご自身が入っているネットバンキングの情報や、カード情報、保険の情報などを書き出してみると、とても役立ちます。その上でその話を、遺言を書いてほしい親御さんに伝えてみましょう。スムーズに話が進みます。
まとめ
普段連絡が取れない相続人がいたり、ややこしい職業についている相続人がいたり、面倒な性格の相続人がいたりした場合、相続人としては、遺言書を残してほしいという気持ちになるでしょう。また、若くても家庭を持っているならば、相続人のために遺言書を書いておくことは良いことです。
その上で、遺言書を書いてほしい方に「もう年なのだから遺言書を書いてほしい」といった気の利かない言い方はせず、この記事を参考にうまく相続人側から遺言書の話を切り出して、進めていきましょう。遺言書は、何度書き直しても問題ありません。エンディングノートと組み合わせて話を進めていけば、うまくいく可能性も高まりますので、頑張って働きかけてみましょう。
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