遺言 2018.01.13
遺言で延命治療を拒否できる?尊厳死の希望を表明する方法について
医療の進歩により、現代では病気やケガで回復の見込みがなくなっても、延命治療により生命を維持することが可能になってきました。しかし、延命治療は本人にとって苦痛なだけでなく、家族にとって負担になることもあるため、延命治療を拒否したいと考える人も中にはいるかと思います。ここでは、遺言で延命治療を拒否できるかという問題や、延命治療を拒否する方法について説明します。
遺言で延命治療を拒否するのはおすすめではない
・尊厳死を希望していてもその通りになるとは限らない
延命治療を拒否し、人間としての尊厳を保ちながら死ぬことは、尊厳死と呼ばれます。尊厳死を希望する人は多いですが、日本では尊厳死についての法律は整備されていません。そのため、延命治療をするかどうかは、本人の意思、家族の意思、医療従事者の判断などの事情から決められることになります。
・延命治療の拒否は事前の意思表示が必要
延命治療の拒否というのは、自分のことは自分で決めたいという自己決定権に基づくものです。延命治療に関して、本人の意思はできる限り尊重されるべきでしょう。しかし、延命治療が必要になった場面では、通常、本人は自分で意思表示ができません。
そこで、延命治療を拒否したい人は、事前に何らかの形で意思表示をしておく必要があります。事前に延命治療の拒否の意思を明確にしておけば、延命治療が必要になった場面で、本人の意思が尊重される可能性があります。
・延命治療の拒否は遺言に書くべき内容ではない
遺言は、自分にもしものことがあった場合に備えて書くものです。延命治療の拒否についても、遺言に書いておけばよいのではないかと考える人も少なくないでしょう。しかし、遺言では何を書いても有効になるわけではありません。遺言に書いて法的な効力を持つ事項(法定遺言事項)は限られており、詳しくは民法に定められています。延命治療の拒否は、遺言における法定遺言事項ではありません。
ちなみに、法定遺言事項以外の法的効力を持たない内容も、遺言に書くことはできます。しかし、遺言に書くことというのは、自分が死亡した後のことになります。延命治療をするかどうかは死ぬ前の話ですから、そもそも遺言に書く内容ではありません。延命治療を拒否する意思表示は、遺言以外でするべきでしょう。
なお、遺言に延命治療の拒否について書いても、それによって遺言が無効になるようなことはありません。家族が遺言の内容を知ることにより、本人の意思を尊重してくれる可能性もあります。しかしながら、延命治療を拒否するなら、遺言よりも効果的な方法がありますので、別の方法を検討した方がよいでしょう。
リビングウイルで延命治療を拒否
リビング・ウィルとは
延命治療を拒否し、尊厳死を希望する人たちを支援している団体が、一般財団法人日本尊厳死協会です。日本尊厳死協会では、会員向けにリビング・ウィル(終末期医療における事前指示書)を配布しています。リビング・ウィルに自分で署名し、家族など身近な人に配ることで、もしもの場合に延命治療を拒否したい意向を伝えることができます。
必ず希望通りになるわけではない
リビング・ウィルで延命治療拒否の意向を示していても、希望通りになるとは限りません。実際に延命治療が必要になった場面では、家族が延命治療を希望すれば、本人の希望にかかわらず、延命治療が行われることが多くなっています。医師は延命治療を中止すると殺人罪に問われることがありますから、家族が希望すれば、通常は延命治療を行います。
尊厳死宣言公正証書を作成
・尊厳死宣言公正証書とは
延命治療拒否の意思表示をする方法として、尊厳死宣言公正証書を作成する方法があります。尊厳死宣言公正証書とは、延命治療を拒否し自然な死を遂げたいという希望を公正証書にして表明したものです。尊厳死宣言公正証書は、公証役場で公証人に作成してもらう文書ですから、信頼性が高く、間違いなく本人の意思であることの証明にもなります。
遺言も公正証書にすることができますが、遺言公正証書には延命治療の拒否について書くことはできません。延命治療の拒否について公正証書にしたいなら、尊厳死宣言公正証書を作成しておくのがおすすめです。
・尊厳死宣言公正証書の内容
尊厳死宣言公正証書では、延命治療拒否の意思表明だけでなく、尊厳死を希望する理由についても書くことができます。さらに、同意している家族の情報や、医療関係者に対する免責についても記載されるため、これを提示することで延命治療を中止してもらえる可能性が高くなっています。
もちろん、尊厳死宣言公正証書によっても、必ず延命治療を拒否できるとは限りません。しかし、遺言などの他の方法に比べると、尊厳死宣言公正証書は延命治療の拒否に効果があるといえます。
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