遺産相続・遺産分割 2018.03.10

遺産相続における寄与分とは

被相続人の家族の中でも、普段はほとんど接点のない家族もいれば、長年近くにいて支え続けてくれた家族もいるでしょう。被相続人の財産を形成するために特別な貢献をした相続人には、遺産相続の際に「寄与分」が認められる場合があります。

遺産相続における寄与分とは何か、遺産相続で寄与分が認められるケースと認められないケース、また遺産相続における遺留分との関係についても解説します。

記事ライター:棚田行政書士

被相続人の財産形成に貢献した人へ認められる「寄与分」

遺産相続における寄与分とは、被相続人の財産形成に特別の貢献をした相続人に対し、遺産相続の際の相続分を増加させることを言います。遺産相続における寄与分に関しては、民法で定められています。

第904条の2「寄与分」

共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、(中略)相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

少し分かりやすく説明しますと、遺産相続で寄与分が認められるのは次のような場合です。

1.被相続人の事業に関する労務の提供、または財産の給付をした

遺産相続の際、被相続人の事業において長年ほとんど無給で働き、事業を繁栄させてきた長男と、独立して自分の希望した仕事に就いた次男とでは、被相続人の財産形成に対する貢献の度合いが異なると見なされるのは明らかです。

このようなケースにおいて、長男の遺産相続における寄与分を認め、次男よりも長男により多くの相続分を与えることは妥当であり、寄与分が認められやすいケースと言えるでしょう。

また、被相続人の事業が経営難に陥った時などに資金援助をしたなどの事実がある場合も、遺産相続の寄与分が認められる場合があります。

2.被相続人の療養看護をした

被相続人の療養看護に努めた相続人がいる場合も、遺産相続の際に寄与分が認められる場合があります。特に、その相続人が療養看護したことによって、施設入所費用などの支出を免れることができた場合には、遺産相続における寄与分が認められやすくなります。

この点では、被相続人との関係を考慮した場合、それが寄与行為と呼べるかどうかも考慮されます。

例えば、元々被相続人と同居していた配偶者や子どもが被相続人の晩年のみ療養看護していたとしたら、それは家族として当然の行為であり、遺産相続の寄与分には値しないと見なされるかもしれません。

一方、遠方の土地で家庭を持っていた子どもが被相続人の療養看護のために近くに引っ越して、仕事などを大幅に調整して継続的に世話をしたとしたら、遺産相続で寄与分が認められる可能性は高くなるでしょう。

3.その他

他には、被相続人の財産を管理したことで管理費用などの支出を免れた場合なども、遺産相続で寄与分が認められる可能性があります。

例えば、被相続人の所有する不動産や賃貸住宅の維持管理を長年代理として行ってきた相続人がいた場合、その相続人の働きによって修繕費や管理費用などの支出が抑えられたことが明らかであれば、遺産相続の際には寄与分に値すると見なされるかもしれません。

遺産相続における寄与分とは、それが被相続人の財産形成に対して「特別な」貢献となっていたかを重視して認否が判断されます。

一般的に考えて、「配偶者であれば当然」「子どもであれば当然」と見なされる程度の貢献では、遺産相続で寄与分が認められるのは難しいでしょう。

 

遺産相続における遺留分と寄与分の関係

遺産相続では一定の範囲の相続人に対し、最低限遺産相続できる相続分が保証されています。これが遺留分です。

ここで、ある相続人に対して遺産相続の寄与分を認めることで、他の相続人の遺留分が侵害されるような場合には、遺留分と寄与分どちらを優先させるべきかという疑問が生じます。

民法では、遺留分と寄与分、どちらが優先されるべきかについて明確な法令は定めていません。

しかし民法では、遺留分を侵害された場合には、遺贈分と生前贈与分を受け取っている相続人に対して減殺請求を行うものと定めています。

ですから、仮に遺留分を侵害するほどの寄与分が認められるとしても、その寄与分に対して遺留分減殺請求はできないということになります。

しかし、遺産相続における遺産分割協議の場であれ、調停・審判の場であれ、遺留分を侵害するほどの高額の寄与分が認められる可能性はほとんどないと言えるでしょう。

 

まとめ

遺産相続における寄与分は、被相続人の財産の増加や維持に特別の貢献をした相続人のみに認められるものです。

寄与分の主張は原則として貢献した相続人本人が行い、相続分をどれほど増加させるかは、遺産相続の際の遺産分割協議で決まります。

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