遺言 2018.04.07
遺言書を直筆で作成する方法
残される家族が遺産相続でトラブルに見舞われないためにも、有効な遺言書を用意しておくことは非常に重要です。遺言書としてよく作成されるのは、遺言者が直筆で記す「自筆証書遺言」です。
しかし、自筆証書遺言は間違った仕方で作成されたために無効になってしまうことが多い遺言書でもあります。ここでは、正しい自筆証書遺言の作成方法や注意点について紹介します。
自筆証書遺言とは
一般的な遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。自筆で作成できる遺言書は、このうちの自筆証書遺言と秘密証書遺言ですが、最もポピュラーなものは自筆証書遺言でしょう。
規定の用紙もないので思い立ったらすぐに作成できますし、費用もかかりません。保管方法も自由なので自分で保管することもでき、税理士や友人に預けておくこともできます。
自筆証書遺言作成の注意事項
自筆証書遺言は、手軽であるために法的な要件を満たさない仕方で作成されやすく、いざ遺産相続が開始した後に発見されても無効になりやすいというリスクも抱えています。
民法では、自筆証書遺言の法的要件を次のように定めています。
1. 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2. 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
つまり、遺言をする本人が全文・日付・氏名を自署すること、必要となる場所に印を押すこと、書き間違えてしまった場合には、その場所を指示して変更した旨を記載して署名すること、変更した場所にも忘れずに印を押すこと、というのが法的要件です。
自筆証書遺言は、配偶者や子どもなど身近な人であっても代筆はできず、パソコンで作成することも認められていません。(※ただし今後の相続法制改正により、財産目録など一部についてはパソコンでの作成を認めるという見解に変わる可能性があります)
本人の自筆であっても印鑑の押印もれがあれば無効になってしまい、単なる二重線での訂正や修正テープなどでの修正をしてしまうと法的要件を満たしていない遺言になってしまいます。
当然ではありますが、訂正や消失が容易な鉛筆やシャーペンなどで遺言を書くのは厳禁です。印鑑は実印でなければならないとはされていませんが、遺言者の意思による遺言書であることを示すためにも実印を使用するのが望ましいです。
鉛筆やシャーペン、実印などの事柄については民法では定められていませんが、だからと言って実務上問題がないということではありません。
自筆証書遺言に記載するべき内容
自筆証書遺言が遺産相続で有効な遺言となるためには、もれなく記載しておくべき事項があります。
最低限書くべき内容は、次の事項です。
タイトル(遺言書と書く)
遺言者の氏名と、「この遺言により次のように遺言する」などの意思表明文
財産を相続させたい人、相続させる財産の内容、相続させる量
遺言書を記した日付(○○年〇月〇日の形式で)
遺言者の住所氏名
財産の量や種類が少なければ、ほんの数行で自筆証書遺言を完成させることができます。財産や相続人の人数が多い場合には、誰にどの程度分配するかをよく考慮した上で、誰が見ても財産を特定できるような仕方で記載します。
例えば、「相続人○○へ金融財産一式を相続させる」などの書き方ではなく、「相続人○○へ○○株式会社の株式1万株、○○銀行○○支店 口座番号○○○の預金全額を相続させる」といった風に、他人が見ても何のことを指しているか分かるような具体的な内容で記載します。
秘密証書遺言も自筆で作成可能
自筆で作成できる遺言には、秘密証書遺言があります。これは、自筆した遺言書を封筒に入れ、公証役場の公証人と自分が連れて行く証人の間で遺言書の存在を証明してもらうという遺言です。
自筆証書遺言は、遺産相続が起こる前に他人に盗み見られる可能性もゼロではありませんし、公正証書遺言は自分の証人や公証人に遺言の内容が知れてしまいます。秘密証書遺言のメリットは、遺言したい内容を一切秘密にしておけることでしょう。
しかし、秘密証書遺言の場合、公証人は遺言書の中身を確かめませんので、それが法的に無効な遺言であっても遺産相続が始まるまで判明しない可能性があります。また、自筆証書遺言と同様に家庭裁判所での検認手続きが必要です。
さらに、相続人になる家族には遺言の存在が秘密とされているため、証人が証言をしてくれない限り、遺産相続が始まっても遺言書の存在に気づいてもらえない可能性があります。
まとめ
手軽ですが、正しい仕方で注意深く作成するべきなのが、自筆証書遺言です。
財産が多くて分け方が複雑になりそうな人や、逆に財産が少なくて相続人全員に分けられそうにない人は、弁護士など専門家の助言も取り入れつつ、確実に有効な自筆の遺言書を作成しましょう。
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