遺産相続・遺産分割 2018.04.25
遺産分割でもめてしまった場合に利用できる裁判所での手続きを紹介
遺産分割は、成立までに長い時間を必要とする場合があります。
しかし、時間をかけても相続人全員の合意が得られない場合や、わざと遺産分割を妨害しようとする相続人がいて遺産分割が進展しない場合には、裁判所での法的手続きを利用して遺産分割を行う方が良い場合があります。
ここでは、遺産分割でもめてしまった際に利用できる裁判所の2種類の手続きについて、詳しくご紹介しています。
「遺産分割調停」を利用する前に行う「遺産分割協議」について
遺産分割においてまず行われるのは、相続人同士で開く遺産分割協議です。
遺産分割協議には、遺産相続をする相続人が全員参加して話し合いや意見交換を行い、自分たちの間で遺産をどのように分けるかを相談します。
必ずしも集まるわけではなく、メールなどで話し合うケースもあります。しかし、遺産分割協議での話し合いは、しばしば争いに発展することがあります。
本来は仲の良い相続人同士でも、自分の経済的利益が関係する話となると冷静でいられなくなってしまい、白熱した言い争いやもめごとが起こりやすくなるでしょう。
遺産分割協議は、遺産分割の仕方に関して相続人全員が納得し、遺産分割協議書に署名押印をすることで成立します。遺産分割はその後、遺産分割協議書の内容に沿って行われます。
ですから、誰か一人でも遺産分割の仕方に不満を持っていれば、遺産分割協議は成立させることができません。
遺産分割協議の成立に関する具体的な期限は設けられていませんが、遺産分割ができない状態は遺産の保護や活用という面から見ても大きなデメリットやリスクがあるため、あまり望ましいことではありません。
そこで、相続人の努力だけでは遺産分割協議の成立が難しい場合に、裁判所で行われる「遺産分割調停」の制度を利用することができます。
裁判所で行う遺産分割調停の概要
遺産分割調停は、家庭裁判所で行われる裁判手続きのひとつです。
家庭裁判所の審判官と、見識や経験が豊富な第三者から成る調停委員会の立ち会いのもと、相続人同士が話し合いを重ねて、お互いに譲歩し合い、穏便な解決に至るようにするのが遺産分割調停の目的です。
遺産分割調停では、相続人同士が面と向かって話し合うのではなく、家庭裁判所の審判官や調停委員会に対して交互に意見を述べながら、それぞれ個別にアドバイスを受けたり、質問に答えたりします。
家庭裁判所の遺産分割調停はあくまでも、相続人の間で和解がなされることを目標に行われます。ですから、家庭裁判所の審判官や調停委員会は、アドバイスをすることはあっても、遺産分割の仕方に関して命令したり強制したりすることはありません。
そのため、家庭裁判所の遺産分割調停では相続人同士の話し合いが平行線に終わり、まったく進展しない場合もあります。その場合は、調停の次の段階である「審判」に移行します。
「遺産分割審判」で裁判所を利用する
家庭裁判所の遺産分割調停では遺産分割がまとまらなかった場合は、遺産分割審判という手続きに移行します。
調停がまとまらなかった時点で、審判の申立てがあったものとみなされるため、審判への移行は自動的に行われます。
裁判所で行う遺産分割審判の概要
調停と違い、審判では相続人同士の話し合いが重要視されることはなく、必要に応じて機会が与えられる程度になります。
家庭裁判所の裁判官が相続人の希望や生活状況、遺産分割に関係する資料や証拠をもとに、遺産分割の仕方を決定します。家庭裁判所の裁判官の決定には強制力があるため、相続人には内容に従う義務が発生します。
家庭裁判所の審判内容に不服がある場合は、審判から2週間以内に「即時抗告」の申立てを行うことで、高等裁判所での裁判を行うことができます。高等裁判所での判決にも不服がある場合には、即時抗告を申立てて最高裁判所での審判を求めることも可能です。
しかし現実には、高等裁判所および最高裁判所に即時抗告を申し立てても、よほどの理由がない限りは申立て自体が却下される可能性が高いでしょう。
ただ、調停および審判では提出できなかった新資料など、家庭裁判所の審判が間違っていることを立証できるような材料がある場合には、即時抗告によって審判が変わる可能性はなきにしもあらずと言えます。
まとめ
調停と審判は、遺産分割でもめてしまった際の解決手段として積極的に利用できる制度です。
なかなか裁判所に頼る気持ちになれない、調停がどんなものか詳しく知ってから検討したいという場合は、家庭裁判所にて無料で開催されている調停相談会に出席してみることをお勧めします。
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