遺産相続・遺産分割 2020.06.23
遺産相続の際に取得する戸籍謄本について徹底解説
遺産相続が発生すると被相続人名義の財産を相続人名義に変更するために、戸籍謄本等の公的な書類を取得し、各所に提出しなければなりません。
この際、戸籍謄本の有効期限について、例えば銀行に提出する場合と法務局に提出する場合では異なるため、取得時期によっては「有効期限が過ぎている」と言われ、取り直さなければならないケースも出てきます。
また、「戸籍謄本」と一口に言っても、目的によって取得するべき戸籍謄本の種類は違います。
そこで本記事では、遺産相続を行うために取得する戸籍謄本について詳しく解説します。
なぜ戸籍謄本が必要になるのか
遺産相続した財産の名義を変更するためには、必ず添付書類として被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本など一式が必要になります。これは、被相続人を中心に誰が相続人なのかを確認する目的があって取得しているのです。
これには2つの側面があります。
他人は家族関係がわからない
家族であれば、誰が相続人なのかはおよそ検討がつくかもしれませんが、名義変更をする側である法務局や銀行からすると客観的に証明してもらわないと安易に名義を変えるわけにはいきません。
そこで、遺産分割協議書と一緒に戸籍謄本等を添付することで、誰が遺産相続の法定相続人なのかを第三者に対して証明しているのです。
隠し子を見つける
戸籍謄本を取得することで、家族も知らなかった事実が判明することが時々あります。
例えば、被相続人に隠し子がいた場合、戸籍謄本を取得するとそこに記載されてきますので、存在を知らないほかの相続人もそこで気が付くのです。
隠し子の存在を確認しないまま遺産相続を進めてしまうと、あとで発覚した際にすべてやり直しになってしまいます。
そのため、遺産相続が発生したらたとえ家族でも必ず戸籍謄本を取得して誰が法定相続人に該当するのか、明確に確認する必要があるのです。
戸籍謄本の有効期限
遺産相続後の名義変更手続きで戸籍謄本等を取得する際、有効期限について案内される場合とされない場合があります。これは、申請する窓口によって戸籍謄本の有効期限に違いが出てくるからです。
銀行に提出する場合の戸籍謄本の有効期限
遺産相続が終わったら銀行に遺産分割協議書や戸籍謄本を提出して、銀行口座の名義を変更することになります。この際の戸籍謄本の有効期限は銀行によって異なるケースはありますが、概ね取得後3ヶ月以内のものを指定されることが多いです。
そのため遺産相続開始後すぐに取得したものだと、遺産相続が終わるころには3ヶ月以上経過してしまっていることがあるので、場合によっては取り直しになることもあります。
相続登記をする場合の戸籍謄本の有効期限
遺産相続で不動産を取得した場合は、登記名義を変更する相続登記を行う必要があります。この際、法務局に提出する戸籍謄本については銀行の場合とは違い有効期限はありません。よって、3ヶ月以上経過している戸籍謄本でも問題なく申請ができます。
ただし、戸籍謄本で確認することは被相続人が死亡した時の法定相続人が誰なのかを確認したいわけなので、被相続人が死亡した後に取得したものでなければなりません。
例えば遺産相続が長引いたとしても、被相続人の死亡後に取得した戸籍謄本等があれば、相続登記申請をする際に再度戸籍謄本等を取り直す必要はないのです。
亡くなった人の戸籍謄本の取り方
亡くなった人の戸籍謄本を取るには、取得する人自身の戸籍謄本で家族関係を証明するのでまずは自分の戸籍謄本を取る必要があります。
仮に直系の家族以外の親族が取得する場合は、別途家族の人からの委任状が必要です。
申請窓口は被相続人の最後の本籍地の役所で、遺産相続に伴って戸籍を揃えたい旨伝えると取得することができます。被相続人が本籍地を何回か転籍している場合は、どんどん遡って役所を回ることになるのでとても大変です。
戸籍謄本は郵送でも取得ができますので、遠方の場合は郵送を活用しましょう。
見方が難しい
ご高齢の方がお亡くなりになり遺産相続が発生した場合、古い戸籍である改製原戸籍という達筆な手書きで書かれた戸籍が出てくることがあります。この戸籍は見方が非常に複雑で、初心者に解読することは極めて難しいです。
このようなケースでは、相続登記と合わせて戸籍謄本等の取得もまとめて司法書士に依頼するとよいでしょう。
遺産相続手続きで必要となる戸籍謄本の種類
遺産相続の手続きで必要となる戸籍謄本には、その用途によって以下のものがあります。
被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
相続に関する数多くの手続きで必要となるのが、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本です。
前述したように、誰が法定相続人なのかを他人に証明する目的で取得します。
民法では、被相続人の財産を受け継ぐ相続人になれる人が定められており、これを法定相続人といいます。
法定相続人になる可能性があるのは、被相続人の配偶者、子や孫やひ孫、父母や祖父母、兄弟姉妹とその子です。
被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本には、被相続人にどんな続柄の親族がいて、誰と結婚し、子どもが何人いるのかなど全てが記載されているため、法定相続人となる人の証明ができるのです。
また、親族も知らなかった、認知した隠し子や、前妻の子などがいた場合も、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本に記載されるので、法定相続人となる親族が全て判明することになります。
相続人全員の現在の戸籍謄本
相続人全員の現在の戸籍謄本も、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と同様、相続に関する大抵の手続きで提出することになります。
相続人全員の現在の戸籍謄本は、相続人が現在も生きていることを証明するために必要だからです。
ただし、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本に相続人も記載されていれば、記載された相続人の現在の戸籍謄本となるため、その相続人の戸籍謄本を改めて取得しなくてもよい場合もあります。
基本的に、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と相続人全員の現在の戸籍謄本 が必要となる手続きには、以下のようなものがあります。
・相続税の申告
・不動産の相続登記
・預貯金の名義変更
被相続人の亡くなった両親などの戸籍謄本
被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合は、被相続人に子どもがいないこと、被相続人の両親、祖父母共に亡くなっていること、被相続人に兄弟姉妹がいること、この3点を証明しなくてはなりません。
そこで、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と相続人全員の現在の戸籍謄本の他に、被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍謄本や、祖父母の死亡が記載されている戸籍謄本が必要となります。
被相続人が亡くなる前に既に他界している子や兄弟姉妹がいる場合は、その出生から死亡までの戸籍謄本も必要となります。
亡くなった相続人の戸籍謄本
代襲相続の場合は、 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と相続人全員の現在の戸籍謄本の他に、被代襲者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本と、代襲相続人の戸籍謄本も必要となります。
代襲相続とは、本来相続人となる親族(被代襲者)が死亡している場合に、相続人の子や孫が代わりに相続人となることで、代襲相続した者を、代襲相続人といいます。
被代襲者に、代襲者となる何人の孫がいるのかなどを確認するため、被代襲者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要となります。
戸籍謄本取得時の流れ
被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得するのは非常に難しく手間がかかります。
なぜなら、戸籍謄本は、結婚や離婚をした場合や、引っ越しなどで本籍地を変えた場合、その都度新しく作成されるからです。
そこで、以下の手順を参考にし、死亡時から遡って効率よく出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得しましょう。
・被相続人の本籍地を調べる
被相続人の最後の居住地で、住民票の除票を取得します。
死亡や転出により住民票は抹消されますが、この抹消された住民票を「住民票の除票」といいます。
住民票の除票には、被相続人の本籍地が記載されているので、これで本籍地がわかります。
もし、被相続人の最後の居住地と本籍地が一緒だとわかっている場合などは、住民票の除票を取得する必要はありません。
次の、被相続人の最後の本籍地の市区町村役場から戸籍謄本を取得するところからスタートしてください。
↓
1. 本籍地の市区町村役場から戸籍謄本を取得する
本籍地がわかったら、その市区町村の役場に申請し、死亡時の戸籍謄本を取得します。
死亡時の戸籍謄本が取得出来たら、そこに前の本籍地が記載されているので、前の本籍地の市区町村役場に申請し、戸籍謄本を取得します。
↓
2.同様の作業を繰り返す
戸籍謄本を取得したら、そこに記載されている前の本籍地の役場に戸籍謄本を請求する、という作業を繰り返して戸籍謄本を遡っていけば、出生時の戸籍謄本にたどり着けるでしょう。
まとめ
遺産相続の各種手続きでは戸籍謄本の添付が必要になることが多いですが、窓口によって有効期限の取り扱いに違いがあるので気をつけなければなりません。
被相続人が転籍を繰り返している場合は、最初に訪れた役所の窓口で次はどこの役所に行けばよいのか聞くとよいでしょう。
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