遺産相続・遺産分割 2017.10.04
株式と相続
株式に投資をしていた父が、不幸にも死亡した場合、株式は誰がどのように承継するのでしょうか?
また、父に複数の子供がいた場合、子供たちが株式を行使するにはどのような手続が必要なのでしょうか?さらに、株式を発行している会社は相続人の保有する株式を取得することができるのでしょうか?
この記事では、父等の被相続人が死亡した場合における、株式の相続のルールをご紹介します。
株式の相続ルール
はじめに、すでに妻に先立たれた父が死亡し、一人息子が父の保有する株式会社A社の株式90株を相続した場合について解説します。 このような場合、息子は、父が保有していた株式を包括承継します。これにより、息子は当該株式を発行している株式会社A社の株主となります。
したがって、息子は株主として議決権の行使や配当を受けることができます(もっとも、息子が株主であることを会社に対抗する場合、株主名簿の名義書換をしなければならないかについては争いがあります。これについて、一般的には名義書換は不要であると考えられています。)。
共同相続人がいる場合の株式の権利関係
それでは、すでに妻に先立たれた父が死亡し、3人の息子が父の保有する株式会社A社株式90株を相続した場合はどうでしょうか。 このような場合、相続された株式は遺産分割がなされるまでの間、法定相続分に応じて共同相続人の準共有に属するとされています。そうすると、3人の息子は、A社の株式を30株ずつ相続するのではなく、3人で90株を準共有することとなります。
では、共同相続人が、準共有する株式について権利を行使する場合、各共同相続人はどのようにして権利行使をするのでしょうか。 株式が数人の準共有に属する場合、共有者は、当該株式についての権利を行使する者(権利行使者)1人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は迷走を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができません。これは、会社の事務処理上の便宜を図るためのルールです。そうすると、息子3人はA社の株式90株の権利を行使するには、権利行使者を指定して、A社に通知する必要があります。(なお、権利行使者の指定は、株式の共有者の持分価格に従いその過半数で行うべきとされています。
したがって、息子3人のうち2人が決定することで、権利行使者の指定をすることができます。)
相続した株式を会社が取得することができるか
株式が相続された場合、会社は当該株式を取得することができるのでしょうか?相続人が会社にとって好ましくないものであったとしても、会社は当該相続人が株主となることを認めなければならないのでしょうか?
このような場合、会社が相続人から株式を取得する方法が2つあります。
一つは自己株式の合意による取得における相続人等からの取得の特則を使って株式を取得する方法(会社法162条)、他の一つは相続人等に対する売渡し請求をする方法(会社法174条)です。
前者の方法(会社法162条)は、株式会社と相続人とが合意に基づき株式を取得する方法ですが、この方法を使用することができるのは、公開会社でない会社でありかつ当該株式について議決権が行使されていない場合に限られます。
後者の方法(会社法174条)は、会社が相続人に対して売渡し請求をすることで、相続人の合意なく株式を取得することができる方法あり、公開会社であったとしても対象となる株式が譲渡制限付き株式であれば、行使することができます。もっとも、会社が相続を知った日から1年を経過したときは権利を行使することができなくなります。
会社はこれらの方法により、相続人が会社にとって好ましくないものであるときであっても、当該相続人を会社から排除することができます。
相続した株式を処分する方法
相続した株式を処分し、現金化するにはどうすればよいのでしょうか?
これについては、単独で相続した場合には問題となりませんが、共同相続人がいる場合には、株式は相続人全員の準共有状態となりますから、遺産分割協議を行い、株式の相続人が名義を変更しなければ売却して処分することができません。
相続した株式を処分する場合には、相続した株式に譲渡制限が付されているかを確認する必要があります。なぜなら、株式に譲渡制限がついている場合、当該株式を譲渡するには、株式会社の承認を得なければならないからです。
また、相続した株式が上場株式であるか否かも確認する必要があります。なぜなら、上場株式を譲渡するには「社債、株式等の振替に関する法律」に基づく振替制度の下、株式を譲渡しなければならないからです。
結びに
相続が行われた場合の財産の帰属等についてイメージすることはできたでしょうか?
父親が不幸にも死亡してしまった場合、親族は葬儀等で慌てふためきますが、父が有していた株式の取り扱いについても考えなければなりません。その際には、上記の法律上のルールを使いこなし、適格な株式の管理を行いましょう。
本記事がそのための一助となれば幸いです。
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