遺産相続・遺産分割 2017.10.04

家督相続が残っている場面とトラブルへの対処法

家督相続は、戦前の「家制度」にもとづく相続制度になります。家制度は廃止されたものの、家督相続の名残はいまだ残っています。ここでは、家督相続が現在どのような形で残っているかを説明し、家督相続をめぐるトラブルの予防法についても考えてみたいと思います。

記事ライター:ゆらこ行政書士

家督相続は戦前に行われていた相続制度

・家督相続とは

家督相続は、戦前の旧民法下で行われていた相続制度です。戦前の「家制度」では、戸主を筆頭とした家族が1つの家に属する形になっており、戸主には家の統率者として絶大な権利が与えられていました。

家督とは家の全財産を含む戸主の権利のことで、原則として前戸主の長男が引き継ぐものとなっていました。家督相続においては、兄弟が何人いても、長男が単独で家の財産をすべて相続していたのです。

・家督相続は戸主の死亡以外でも発生

現在の相続制度では、被相続人が死亡しない限り、相続が発生することはありません。しかし、家督相続は、戸主の死亡以外に、戸主の隠居などの際にも可能とされており、生きている間に戸主の地位を移すことができるようになっていました。

・戦後の民法改正により家督相続は廃止

家督相続制度は、昭和22年の民法改正により廃止され、現行民法による新しい相続制度が開始しました。現行民法においては、相続は死亡によってのみ開始することとなりました。また、戸主という概念はなくなり、兄弟の相続分は平等となりました。

 

相続登記では家督相続が適用されることがある

家督相続は既に廃止された制度ですから、現在は家督相続が行われることはありません。しかし、不動産の相続登記においては、家督相続に従って手続きをしなければならない場面があります。

・相続登記の手続きに期限はない

不動産の所有者などの情報は法務局で登記されていますから、不動産の相続があったときには、名義変更のために、相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)を行う必要があります。しかし、相続登記は法律上義務付けられているわけではなく、相続登記をしなくても罰則等はありません。そのため、古い時代に相続があった不動産でも、相続登記がされずに放置されているケースがあります。

・旧民法下の相続登記が未了の場合

不動産を売却するときや、不動産を担保にしてお金を借りるときには、現在の不動産の所有者と登記簿上の名義が一致していなければなりません。過去の相続登記がされていない不動産については、売却等の前提として、相続登記を行う必要があります。

家督相続が廃止された昭和22年5月3日よりも前に相続があった物件については、通常の相続を原因とする所有権移転登記ではなく、家督相続を原因とした所有権移転登記を行うことになります。なお、家督相続による登記では、遺産分割協議書も不要で長男名義に変更するだけになりますから、手続きとしては簡単になっています。

 

家督相続をめぐるトラブルへの対処法

・今でも家督相続にこだわる人もいる

家督相続は70年前まで行われていたので、古くからの慣習が根強く残っている地域などでは、いまだに長男が全財産を相続するものという意識を持っている人が少なからずいます。そして、相続の場面で、長男が全財産を相続すると言って譲らなかったり、他の兄弟に相続放棄を迫ったりして、トラブルになることがあります。

・遺産分割調停で問題解決を図る

相続人の中に家督相続にこだわる人がいて、話し合いで公平な遺産分割ができない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるという方法があります。調停は家庭裁判所での話し合いになりますが、第三者である調停委員が間に入り、現行民法にもとづいた公平な遺産分割ができるように手続きを進めてくれます。さらに、調停が成立しない場合には、裁判所の職権で審判という決定が出されることもあります。

・長男に遺産を多く譲りたいなら遺言を活用

現代でも、家の事業等の後継者として、長男に家やその他の財産を譲りたいということはあると思います。そのような場合には、相続が発生する前に、遺言を残しておくのが有効です。遺言があれば、法定相続よりも遺言が優先しますから、長男に遺産を多く引き継がせることも可能です。ただし、長男以外の子や配偶者には「遺留分」があることに注意しておく必要があります。

遺留分とは、民法上保障されている最低限の取り分になります。遺言相続によって遺留分が侵害された場合、遺留分を持っている人は、「遺留分減殺請求」という遺留分の取り戻し請求ができます。遺言を書く時点で遺留分に配慮した内容にしておけば、長男が遺留分減殺請求を受ける心配がなくなります。

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