遺産相続・遺産分割 2018.02.22
遺産分割における時効について
遺産相続の場面で遺言がない場合、遺産をどのように分けるかは、相続人同士で行う遺産分割協議によって決定することとなります。
しかし様々な理由で遺産分割協議を行えない、または遺産分割協議が一向に進展しないなど、困った事態になることもあり得ます。このような場合、遺産分割を行うのに時効はあるのだろうか?という点が気になるかもしれません。
この記事では、遺産分割における時効と遺産分割が進まない場合の対策方法について、解説します。
遺産分割請求権の時効について
遺産分割とは、相続人の共有状態にある遺産を分割することを指しています。そして遺産分割を行う権利は、遺産分割請求権と呼ばれています。
遺産分割は、相続人の共有状態にある遺産を処分し、共有状態を解消するための手続きです。そのため、遺産の共有状態が継続している間は遺産分割請求権も同時に存続することとなり、時効によって消滅することはまずありません。
しかし、長い間遺産を相続人全員の共有状態にしておくことにはデメリットがあります。特に共有状態の遺産が不動産の場合は、誰がどのように維持管理するのかを決め、その通りに行わなければなりません。定期的に支払わなければならない税金も、皆で均等に負担しなければなりません。
共有状態の遺産が不動産以外の場合でも、共有している相続人のうちの誰かが亡くなり、また新たな遺産相続が発生してしまうことも考えられます。その場合、新たな遺産相続の相続人にとっては遺産の権利者が複数いることになり、遺産分割が非常に複雑になってしまうでしょう。
共有している相続人の人数が多ければ多いほど、トラブルの発生率も高くなると考えて良いかもしれません。ですから遺産分割に時効はないものの、できるだけ早めに遺産分割を終えることが望ましいでしょう。
ちなみに、遺産が不動産の場合には相続登記(不動産の名義変更)をする必要が出てきます。共有であってもなくても相続登記はできますし、相続登記自体にも時効はありません。
しかし、相続登記をしていないと、第三者に対して不動産の所有権を主張することができません。このようなトラブルを防ぐために、できる限り早めに遺産分割を確定させて相続登記を申請しましょう。
遺産分割対象の遺産には、時効がある場合も
遺産分割自体に時効がないとはいえ、遺産そのものには時効がある場合があります。
例えば、被相続人の銀行の預金です。預金者が亡くなった後の預金は凍結されます。凍結された後、何の手続も行なわないまま一定期間が経過してしまえば、消滅時効にかかる可能性があります。
銀行預金の場合は「商事債権」となるため、法律上の消滅時効期間は5年です。銀行以外の信用金庫や信用協同組合などは、商法の適用がないため10年と考えることができます。
つまり、最短で預金の時効は5年ということになります。時効後にも相続人からの支払い請求に応じてくれる銀行はありますが、時効後の取り扱いは各金融機関の判断によります。被相続人の銀行預金も、早めに遺産分割を行って請求しておきましょう。
遺産相続に関係する、時効のある権利とは
ここまで解説してきた通り、遺産分割請求権そのものには時効はないと考えて良いでしょう。しかし、遺産分割に関係する他の権利については、明確な時効が存在するものがあります。
例えば、相続放棄の時効です。相続放棄をする場合は、相続開始から、あるいは自分に相続権があることを認識してから3カ月以内に申立てをしなければ時効となり、相続を承認したものと見なされてしまいます。相続放棄の時効は、遺産相続に関係する権利としては最も短い時効が設定されている権利です。
また、遺留分減殺請求にも時効があります。これは自分の相続分が法律によって保証されている最低限の取り分に満たない場合に起こす請求ですが、遺留分の侵害が分かってから1年以内に請求しなければ時効になります。相続の事実自体を知らなかった場合でも、相続開始から10年を過ぎると時効となります。
さらに、相続回復請求権にも時効があります。これは、本来法定相続人としての立場を有している人以外の人が、相続人であると偽って遺産を相続したり占有したりしている場合に、本来の法定相続人がその人から遺産を取り戻し、相続権を回復させるための権利です。
相続回復請求権は、相続権の侵害の事実を知った時から5年以内に行使しなければ時効となります。相続開始から20年経過してしまった場合も、無条件で時効となります。
まとめ
遺産分割自体には時効はありませんが、トラブルの元となるためできるだけ速やかに遺産分割を完了させることが勧められています。遺産分割以外には時効のあるものもありますので、うっかり時効にかかって権利を失ってしまわないように注意しましょう。
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