遺産相続・遺産分割 2018.03.29

遺産相続で内縁の妻に財産を譲ることはできる?

婚姻している夫婦の場合、夫が亡くなったときには、妻が夫の遺産を相続することになります。一方、長年連れ添っているけれど、婚姻届を出していない「内縁の妻」は、夫の遺産を全く取得できないのでしょうか?ここでは、遺産相続の際、内縁の妻がどう扱われるかについて説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

内縁の妻に遺産相続の権利はある?

・亡くなった人の配偶者は必ず相続人になる

亡くなった人の遺産を相続できる相続人の範囲は、民法で定められており、法定相続人と呼ばれます。法定相続人になるのは、亡くなった人(被相続人)の配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹です。

子、直系尊属、兄弟姉妹については優先順位があり、先順位の人がいれば相続人にはなりませんが、配偶者は常に相続人になります。つまり、遺産相続において、配偶者というのは特に優遇されているのです。

・遺産相続の権利は内縁の妻には与えられていない

被相続人の配偶者は必ず相続人になりますが、相続人になれるのは、あくまで法律上の婚姻をしている配偶者になります。事実上の婚姻状態にある「内縁の妻」は配偶者ではありませんから、たとえ長年一緒に暮らしていても、遺産相続の権利はありません。

法律上の婚姻をしていないかぎり、民法上、遺産相続において優遇されることは基本的にありません。逆に、法律上の婚姻をしている配偶者であれば、たとえ婚姻期間が1日であっても、相続権をもつことになります。

 

内縁の妻でも遺産を受け取れるケースとは?

・遺産相続において内縁の妻も財産をもらえることがある

内縁の妻には遺産相続の権利は与えられていませんが、内縁の妻でも遺産を取得できるケースがあります。法定相続人がおらず、かつ、内縁の妻が「特別縁故者」として認められた場合になります。

・特別縁故者とは相続人以外で特別の関係にあった人

特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた人や被相続人の療養看護に努めた人など、相続人ではないけれど被相続人と特別な関係にあった人をいいます。内縁の妻は、特別縁故者に該当するケースが多いものと思われます。

・相続人不存在なら特別縁故者が財産を取得できる

内縁の妻が特別縁故者として遺産を受け取れるのは、相続人不存在の場合になります。相続人が1人でもいれば、その相続人が遺産相続しますから、内縁の妻が遺産を取得することはできません。

相続人不存在の場合というのは、法定相続人が最初から1人もいない場合のほか、相続人全員が相続放棄をし、法定相続人がいなくなった場合も含まれます。

・特別縁故者が財産を取得するまでの流れ

相続人不存在の場合でも、内縁の妻が自動的に遺産を取得できるわけではありません。内縁の妻が遺産を受け取るためには、家庭裁判所に申し立てて、相続財産管理人を選任してもらう必要があります。

相続財産管理人の選任後、公告などを行って相続人不存在が確定した後、内縁の妻は相続財産分与の申立てをすることができます。家庭裁判所が内縁の妻を特別縁故者と認めた場合には、内縁の妻に相続財産の全部または一部が分与されることになります。

 

内縁の妻に確実に財産を残す方法は?

・内縁の妻に財産を残したいなら生前の対策が必要

法定相続人がいない場合には、内縁の妻が特別縁故者として遺産を取得できることがあります。しかし、法定相続人がいる場合、相続人全員が相続放棄しない限り、内縁の妻が遺産を取得できる可能性はありません。

相続人不存在の場合でも、内縁の妻が家庭裁判所に特別縁故者として認められるかどうかはケースバイケースです。つまり、生前に遺産相続の対策をしていない場合には、内縁の妻が遺産を受け取れる保証はないことになります。

・内縁の妻には遺言を書いて財産を遺贈する

遺産相続の際、内縁の妻に財産を確実に取得させたいなら、遺言を作成しておく必要があります。遺産相続では、遺言があれば遺言の内容が優先します。内縁の妻に財産を遺贈する旨の遺言を書いておけば、内縁の妻が遺産を取得することが可能になります。

・相続人がいる場合には遺留分に注意

遺言により内縁の妻に財産を遺贈する場合、相続人がいれば、遺留分に注意する必要があります。遺留分とは、遺言の内容にかかわらず、相続人が最低限相続できる割合になります。

内縁の妻に全財産を譲る旨の遺言を書いたとしても、遺留分をもつ相続人が遺留分減殺請求をすれば、遺留分についてはその相続人に返還しなければなりません。

なお、相続人のうち、兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、相続人が兄弟姉妹だけの場合には、遺言を書くことにより、内縁の妻に遺産の全部を取得させることも可能になります。

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