遺産相続・遺産分割 2018.06.13

遺産分割とは?相続人が複数いる場合に必要な手続きについて

相続では、相続財産を各相続人に帰属させる遺産分割が必要になります。ここでは、遺産分割とはどのような手続きで、どんな手順で進めたらよいのかについて説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

遺産分割とは共有になっている相続財産を分割すること

相続財産は相続開始と同時に相続人の共有になる

相続では、被相続人が亡くなると同時に、被相続人の所有していた財産が相続人に移転します。相続人が一人だけの場合には、その相続人が遺産を引き継ぎます。一方、相続人が複数いる場合には、相続人全員で遺産を引き継ぐことになるため、遺産は相続人全員の共有となります。

相続人の共有にならない財産もある

相続人が複数いる場合、厳密にはすべての相続財産が相続人全員の共有になるわけではありません。たとえば、賃金などの可分債権(分けられる債権)は、自動的に法定相続分で分けられると考えられています。

お墓、位牌、仏壇などは、そもそも相続財産ではなく、祭祀を承継する人が引き継ぐことになります。被相続人の一身相続権(扶養請求権、生活保護受給権、身元保証人の地位など)も相続の対象ではないので、相続人の共有にはなりません。

遺産分割とは?

相続により財産を相続しても、共有のままでは各相続人が財産を自由に使うことができないので、相続財産を分ける手続きが必要になります。遺産分割とは、共有となっている相続財産を分割し、それぞれの相続人が引き継ぐ手続きです。

遺言があれば遺産分割は不要?

相続では、被相続人が遺言を残していれば、遺言が優先することになります。そのため、遺言でどの財産を誰に帰属させるかについて指定されていれば、遺産分割は不要です。遺言があっても、相続分しか指定されていない場合や、一部の財産についてしか指定されていない場合には、遺産分割が必要になります。

 

話し合いで行う遺産分割とは?

遺産分割協議とは

遺産分割は、相続人全員の話し合いで行うのが原則になります。相続人全員による遺産分割の話し合いのことを遺産分割協議といいます。遺産分割協議が成立したときには、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員が署名・押印して、印鑑証明書を添付します。

遺産分割協議の期限

遺産分割協議には法律上の期限はありません。ただし、遺産分割が終わらなければ相続手続きが進められないため、相続開始後できるだけ速やかに行う必要があります。

相続税の申告が必要なケースでは、遺産分割が終わっていなければ、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が利用できないため、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)までに終わらせた方がよいでしょう。

代償分割による遺産分割とは

遺産分割は、各相続人が相続財産の現物を引き継ぐ「現物分割」が一般的です。しかし、相続財産が不動産など分けにくいものだけの場合には、現物分割が困難なことがあります。現物分割が難しい場合には、「代償分割」という方法が用いられるケースがみられます。

代償分割とは、相続財産の現物を引き継いだ相続人が、他の相続人に対して代償金を支払うことで、各相続人が得た額が相続分どおりになるよう調整する方法です。たとえば、相続財産が被相続人の自宅のみで、特定の相続人が自宅を引き継ぎたい場合には、代償分割が便利です。

換価分割による遺産分割とは

遺産分割では「換価分割」という方法が用いられることもあります。換価分割とは、相続財産を売却して得た代金を相続分で分ける方法です。相続財産の現物を特に利用したい相続人がいない場合には、換価分割が用いられることが多くなっています。

 

裁判所が行う遺産分割とは?

遺産分割調停とは

相続人全員で遺産分割協議を行っても、遺産分割の方法が決まらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。

遺産分割調停では、裁判官1名と家事調停委員2名によって構成される調停委員会が、合意に向けて相続人の意見の調整を行ってくれます。遺産分割調停が成立すれば、裁判所によって調停調書が作成されます。

遺産分割審判とは

遺産分割調停が不成立になった場合には、自動的に遺産分割審判に移行します。遺産分割審判は、裁判官が遺産分割の方法を決定する手続きです。審判が行われたときには、審判書が作成されます。

なお、家事事件には調停から申し立てなければならないという調停前置主義がありますが、遺産分割事件については調停を申し立てることなく、審判を申し立てることも可能です。

ただし、いきなり遺産分割審判を申し立てた場合でも、裁判所の職権により遺産分割調停に付されるケースが多くなっています。

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