遺産相続・遺産分割 2018.06.14
遺産分割で寄与分が認められるのはどんなケース?
相続では、亡くなった人(被相続人)が遺言を残しておらず、相続人が複数いる場合には、「遺産分割」が必要になります。遺産分割では原則的に法定相続分に従って相続財産を分けることになりますが、「寄与分」を認定した遺産分割を行うことも可能です。ここでは、遺産分割の際に認定される寄与分とは何か、寄与分が認められるのはどのようなケースかについて説明します。
遺産分割で考慮すべき寄与分とは?
遺産分割については話し合いで決める
相続の際に相続人が複数いれば、相続人の間で遺産を分ける「遺産分割」が必要になります。遺産分割については、相続人全員で話し合って決めることになります。
相続人全員による遺産分割の話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。なお、被相続人が遺言を残しており、遺言によって遺産の帰属について決まる場合には、遺産分割協議は不要です。
寄与分とは
遺産分割では、各相続人の取得する財産の額が法定相続分どおりになるように調整します。しかし、相続人の中に被相続人の財産に対して特に貢献した人がいる場合、その人には法定相続分よりも多い財産を取得させた方が公平と考えられます。
「寄与分」とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人に対し、本来の相続分よりも多い割合の相続財産を取得させる制度になります。
寄与分を考慮した遺産分割とは?
寄与分を持つ相続人がいる場合の遺産分割は、次のような手順になります。
1.遺産の額から寄与分相当額を控除
2.寄与分相当額を控除した遺産を法定相続分で分割
3.寄与分を持つ相続人の取得額に寄与分相当額を加算
遺産分割で寄与分が認められる要件
民法に規定されている寄与分の要件
寄与分は民法上の原則である法定相続の例外ですから、簡単には認められません。民法904条の2では、寄与分は「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」について認められるとされており、この要件に該当しなければ、寄与分は認められないことになります。
寄与分の対象となる「特別の寄与」とは?
寄与分が認められるには、「特別の寄与」が必要です。特別の寄与とされるのは次のようなものになります。
被相続人の事業に貢献した場合
被相続人の事業を手伝って、財産の維持や増加に貢献した場合です。単に被相続人の会社で働いていたというだけでは特別の寄与には該当せず、他の従業員を雇うよりも安い給料で働いていたなどの特別な事情が必要です。
被相続人の生活費等の援助を行っていた場合
被相続人の生活費や医療費を負担して援助していた場合です。夫婦、親子、兄弟姉妹には元々扶養義務があるので、特別の寄与とされるケースは少なくなります。
被相続人の療養介護を行っていた場合
被相続人の看護を行って、付添看護の費用支出をまかなった場合などが該当します。
「特別の寄与」と因果関係のある「財産の維持又は増加」が必要
寄与分が認められるためには、相続人が被相続人に貢献しただけでなく、その貢献が被相続人の財産に対してプラスに働いていることが必要です。被相続人を援助する行為でも、結果として被相続人の財産を減少させることになっていれば、寄与分は認められません。
遺産分割において寄与分を主張する方法
寄与分は遺産分割の際に主張しなければならない
寄与分をもつ相続人がいる場合、何もしなくても寄与分が認定されるわけではありません。寄与分を持つ相続人は、遺産分割に際して、自らの寄与分を主張する必要があります。
遺産分割協議での寄与分の主張
遺産分割は原則的に遺産分割協議によって行いますから、寄与分を持つ相続人は、遺産分割協議において自らの寄与分を主張しなければなりません。他の相続人全員が寄与分を認める場合には、寄与分を考慮した遺産分割を行って、遺産分割協議を作成します。
寄与分を定める処分調停の申し立て
遺産分割協議で寄与分を主張しても、他の相続人の同意が得られない場合には、家庭裁判所に調停(寄与分を定める処分調停)を申し立てることができます。
遺産分割調停が行われている場合には、寄与分について決まらなければ遺産分割ができないため、寄与分を定める処分調停は遺産分割調停と並行して行われることになります。
寄与分は最終的に審判で決まる
調停における話し合いがまとまらず、調停不成立となった場合には、審判に移行します。審判では、裁判所が寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して寄与分の割合を定め、遺産分割方法を決定することになります。
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