相続人・遺留分 2019.10.23

相続税の基礎控除は改正によりどれだけ変わった?

配偶者居住権など、相続に関連する法改正があったこともあり、相続税に対する関心が高まりつつあるように感じます。

ただ、実は相続税についても少し前に基礎控除の改正があったばかりで、それによってさまざまな影響が出始めていることをご存じでしょうか。

そこで今回は、相続税の基礎控除の改正による影響や、今後とるべき対策などについて解説していきたいと思います。

記事ライター:棚田行政書士

相続税の基礎控除はいつから改正された?

相続税の基礎控除額については、2015年1月1日から改正法が施行され、次のように控除額が縮小されました。

旧控除額:5,000万円+法定相続人の人数×1,000万円

新控除額:3,000万円+法定相続人の人数×600万円

例えば、法定相続人が2名だった場合、改正前は7,000万円の基礎控除額があったのが、改正後は4,200万円と大幅に縮小されたのです。

ちなみに、基礎控除額とは相続税そのものを控除するのではなく、相続税が課税される課税価格に対する控除額になります。つまり、改正後については、法定相続人が2名だと4,200万円以上の遺産を相続すると、相続税が課税されるということです。

基礎控除改正による影響

相続税の基礎控除が改正されたことで、これまで相続税について縁がなかった一般的なご家庭についても、相続税が課税されることとなりました。

中でも影響が大きかったのが、都心部に自宅があるご家庭の相続です。

不動産の評価額が高い

遺産相続において、最も多くの価格割合を占めるのが「不動産」といわれています。

中でも、都心部に自宅がある方については、土地の評価額が高額になるケースがあるため、現預金がほとんどない相続でも、自宅の名義人が死亡すると高額な相続税が課税されるリスクがあるのです。

基礎控除改正による不動産相続の落とし穴

不動産の評価額が高額になってしまったが故に、相続税の課税対象となってしまうと、注意しなければならないのが納税資金です。

例えば、預金資産で1億円を相続したのであれば、相続税についてもそこから支払えばよいので、納税資金に困ることはありません。

ところが、不動産が課税価格のほとんどを占める相続では、相続人自身が現金で相続税を準備しなければならないという問題が発生します。

不動産を売却して現金化するという選択肢もありますが、不動産が自宅だったりすると、売るに売れないという状況になってしまうのです。

また、仮に売れる状況だったとしても、不動産をすぐに現金化しようとすると、相場よりも低い金額で取引されてしまう可能性があります。

実際、相続を理由に市場に売却に出てくる不動産については、買主から厳しい指値を入れられて値下げ交渉されるケースが多いようです。

なぜなら、相続税申告は相続開始を知った日の翌日から起算して10ヶ月以内に納税まで行わなければならないため、ゆっくり時間をかけて高値で売ることが難しいからです。

このように、相続税が一般化したことで、一般的なご家庭についても、今後は何らかの対策を講じていくことが重要であるといえます。

 

相続税の基礎控除改正で求められる対策

基礎控除額が改正によって引き下げられたことで、金融資産がほとんどない方にも、相続税が課税されるケースが増えてきました。

そこで必要になってくるのが「納税資金対策」です。

相続税は原則として現金一括納付が原則なので、相続が発生した際に納税資金に充てられる資金を手元に準備しておくことがとても重要になります。

生前に相続税の納税資金を現金で預金するのも1つの方法ですが、納税資金対策として基礎控除の改正前から注目されているのが「生命保険」を利用した納税資金対策です。

生命保険による納税資金対策とは?

生命保険とは人が死亡したことによって保険金が支払われる保険商品のことで、死亡と同時に多額の保険金という現金が手に入ることから、基礎控除改正後の納税資金対策として注目を集めています。

生命保険が納税資金対策として優れているポイントは次の2つです。

ポイント1:非課税枠がある

生命保険で支払われる保険金についても、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。

「となると、基礎控除の改正によってさらに相続税が課税されるのでは?」と心配される方もいるかと思いますが、実は、保険金には相続税の基礎控除のように「600万円×法定相続人の人数」の非課税枠が規定されているのです。

例えば、相続人が2名であれば1,200万円までの保険金であれば非課税で受け取ることができるのです。

そこで、非課税枠以下の保険金額で生命保険の契約をすれば、基礎控除改正による影響を受けることなく、納税資金を準備することができます。

ポイント2:節税効果がアップ

保険金が相続税の対象となるのは、保険料を被相続人が負担して、相続人が保険金の受取人に指定されているケースです。

保険料を被相続人が負担するということは、それだけ相続財産が減ることになります。ですが、それは財産がなくなっているわけではなく、保険料として支払っているだけなので、死亡と同時に支払った保険料以上の保険金を受け取ることができるのです。

しかも、受け取った保険金には非課税枠があるため、単純に生前贈与するよりも、効率的に節税しながら納税資金対策ができます。

 

まとめ

相続税の基礎控除の改正によって、これまで一部の富裕層に課税されていた税金が、一般的に課税される税金にモデルチェンジしました。

これまで納税資金対策をしたことがないというご家庭についても、自宅等の不動産を所有している場合については、生前に一度税理士に相談して相続税のシミュレーションをしてみることをおすすめします。

そのうえで、予想される相続税が準備できるよう、生命保険などを活用して納税資金対策を検討していくとよいでしょう。

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