遺言 2018.03.07
遺産相続で遺言が見つかった場合の流れ
遺産相続が始まるとまず、被相続人の遺言書があるかどうかを探すことになります。手軽に作成でき、費用もかからないことから、遺産相続の場面で最も多く用いられている遺言の形式は「自筆証言遺言」と呼ばれるものです。
ここでは、遺産相続で遺言が見つかった場合にどうしたら良いかに加え、遺産相続で遺言が見つかった場合に絶対にしてはいけないことも紹介します。
遺言は、家庭裁判所で検認を受ける
遺産相続開始後の遺言書捜索の際、自宅などで発見される遺言書のほとんどは「自筆証言遺言」でしょう。
自筆証言遺言とは、被相続人が自筆で記入した遺言書のことです。証人の立ち合いも不要で一人でもすぐ作成できることから、遺産相続の際に最もよく発見される遺言となっています。
自筆証言遺言が見つかったなら、できるだけ速やかに家庭裁判所の「検認」を受けます。検認とは、家庭裁判所が遺言の存在と内容について認定するための手続きです。検認によって、その遺言書が、確かに被相続人本人が作成したものかどうかが確認され、遺産相続する相続人や遺産相続の利害関係者に遺言内容が知らされます。
また、遺言書の偽造や変造を防ぎ、確実に保存するという役割も果たします。自筆証言遺言は基本的に自由に作成できる遺言であり、封印をするかどうかについての規定もありません。もし見つけた遺言書に封印がない場合は、検認を受ける前に開封しても問題ありません。
ただし封印されているものについては、開封せずに検認を受けます。封印されていた遺言書は、家庭裁判所で遺産相続する相続人や代理人の立ち合いのもと開封され、検認されます。
検認は、遺産相続の遺言書の内容と、その遺言書が被相続人による遺言で間違いないかを確認するための手続きに過ぎません。遺産相続においてその遺言の内容が適正か、遺産相続において有効かなどを判断するものではありません。
遺言書の検認手続きの手順とは
遺産相続発生後に発見した自筆証書遺言は、家庭裁判所で検認申立てをすることで検認されます。検認手続きのおおまかな手順を説明します。
1.家庭裁判所へ検認申立てを行う
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ、検認の申立てを行います。申立てができるのは遺言書の保管者か、遺言書を発見した遺産相続する相続人です。
必要な書類は次のようなものです。場合によっては、この他の書類も必要となる可能性があります。
・遺言書の検認申立て書
・申立人および遺産相続する相続人全員の戸籍謄本
・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
・遺産相続する相続人および利害関係者の名簿
これらの書類に加え、遺言書1通につき収入印紙800円分の手数料と、書類のやり取りのための郵便切手も必要になります。
2.検認期日の決定
申立て後、検認を行う日付が確定すると、家庭裁判所から遺産相続する相続人や利害関係者に対して通知が届きます。指定された日時に家庭裁判所へ出頭します。
3.検認当日
当日は、遺産相続する相続人や代理人、その他遺産相続における利害関係者の立ち会いのもと、裁判官によって遺言書が開封されます。遺言書の内容や署名、日付などを確認し、偽造を防ぐために検認当日の遺言書の状況を明確にします。
ちなみに、検認申立人以外の相続人が検認当日に出頭するかどうかは各相続人の判断に任されています。必ずしも遺産相続する相続人全員が揃っていなくても、検認手続きは可能です。
4.検認済み証明書の作成・遺言執行
検認が終わると、遺産相続の遺言書の原本に検認済み証明書が添付され、申立人に返還されます。これで検認手続きは終了です。
遺言の検認をしないとどうなる?
もし遺言書を保管していた人、または遺言を見つけた人が、検認を受けずに遺言書を隠し持っていたり放置したりした場合はどうなるでしょうか?
この場合、5万円以下の過料が課せられます。
封印されている遺言書を検認前に開封してしまった場合も同様です。遺言書が無効とされるわけではありませんが、5万円以下の過料は課せられます。
もし検認手続きをしなかったことで遺産相続する相続人や他の利害関係者に不利益が生じてしまうと、検認手続きを怠った人には損害賠償責任が発生してしまいます。
もし遺産相続の遺言書を発見したのに隠匿したり、破棄したり、偽造したりした場合には遺産相続権を剥奪されるだけでなく、犯罪行為として刑事責任を問われる可能性もありますので注意しましょう。
まとめ
遺産相続の際に遺言書が見つかったら、速やかに検認請求をしましょう。遺産相続は被相続人の死後すぐに始まるものなので、遺言書を発見して気が動転してしまい、封印してある遺言書を開封してしまった、という事例は少なくありません。
ただでさえ大変な遺産相続で余分な荷を負わないためにも、遺言書の正しい扱い方を覚えておきましょう。
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