遺言 2020.05.11

法改正でめちゃくちゃ使える自筆証書遺言のメリット

相続対策の1つとして検討する人が増えている遺言書ですが、実は2020年の法改正で遺言書の取り扱いが大きく変わりました。

そこで本記事では、法改正によって利用価値が一層高まった「自筆証書遺言」のメリットについて詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

自筆証書遺言とは

そもそも自筆証書遺言とは、自分自身の直筆で書く遺言書のことで、法律で決められている遺言書の中で最も簡単に作成できる遺言書です。

遺言書には自筆証書遺言以外にも公正証書遺言と秘密書遺言という遺言書の種類がありますが、どちらも公証役場まで行かないと作成できないので、コロナウイルスの影響で外出リスクが高まる現在の状況から考えるとあまり積極的におすすめはできません。

そんな中、2020年の法改正によって自筆証書遺言のメリットが大幅に拡充されました。

 

遺言書の保管を任せられる

自筆証書遺言はいつでもどこでも気軽に作成できることがメリットですが反面、紛失、隠蔽、改ざんといったリスクを常に抱えていました。

実際、相続が発生した後にあると聞いていたはずの遺言書が見つからず、家族でパニックに陥るというケースは少なくありません。万が一遺言書が見つからないと、次のような支障が発生します。

遺贈ができない

遺言書がなくても財産を取得するのが相続人だけであれば、遺産分割協議をして合意をすれば問題ありませんが、仮に相続人ではない人に財産を取得させたかった場合は、遺言書がないと取得させる方法がありません。

例えば内縁関係の方については、万が一遺言書を紛失してしまうと大変なことになります。

従来の保管方法

法改正前までの自筆証書遺言の保管方法は、原則として自分自身で責任を持って保管するしかなかったので、書いた直後は覚えていても数年後に忘れてしまうというケースが多々ありました。

また、家の中に隠しておくと、隠蔽や改ざんされる恐れもあったのです。

このような状況を回避するために、弁護士などの専門家が相続相談の一環として遺言書の保管サービスをやるようになりました。

ところが、これには大きな弱点があったのです。

それは弁護士の死亡リスクや認知症リスクです。

弁護士も人ですから、亡くなる可能性は常にあります。

仮に本人よりも先に弁護士が死亡してしまうと、弁護士法人のように大きな事務所であればよいのですが、弁護士1人で営業している個人事務所については注意が必要です。

最悪の場合廃業してしまうこともあるため、預けていた遺言書が見つからなくなってしまう可能性があるのです。

このように自筆証書遺言の保管には大きな課題があったのです。

公正証書遺言は面倒

公証役場で作成する公正証書遺言であれば、原本を公証役場で保管してくれますのでとても安心ですが、作成にあたって一定の手数料がかかること、及び作成日当日に証人2名の立会いが必要になるなど非常に大変です。

「簡単に作成できる自筆証書遺言を安全に保管してくれたらな」

そんなニーズが以前からありました。

 

法務局が保管

法改正により、今後は自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度が2020年7月10日からスタートします。

これにより法務局に依頼をすることで、遺言書を電子的記録として保存してくれますので、原本紛失や改ざんを防げるのです。

検索ができる

自筆証書遺言は見つからないケースも多く、そもそも遺言書を書いていたのかどうかも確認することができません。

法務局の保管サービスを使って保管した場合、相続人から法務局に問い合わせをすれば、本人の書いた遺言書が預けられているかどうか確認することができます。

これにより、相続開始後の遺言書捜索の手間を大幅に削減できるでしょう。

検認が不要に

今回の法改正で注目すべきは「検認」です。

これまで自筆証書遺言は相続開始後に、家庭裁判所において検認を行い、遺言書に形式的な不備がないかどうか確認してもらわなければ執行できませんでした。

法改正によって、法務局に保管した自筆証書遺言については隠蔽や改ざんといったリスクを回避できるということで、相続開始後の検認が不要になったのです。

検認手続きは相続開始後すぐにできるわけではないので、遺言書の執行までに時間がかかっていたのですが、今後は法務局に遺言書を預けていれば相続開始後すぐに遺言書を執行できるようになります。

 

まとめ

今回の法改正によってこれまで自筆証書遺言の弱点だった部分がほぼすべて解消されたので、今後は自筆証書遺言を活用する人が増えてくると考えられます。

費用も公正証書遺言に比べるとかなり安くできますので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

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