遺言 2017.11.02

遺言書がある場合の相続手続きはどうなる?

相続が発生した際の相続分は、民法に規定されている法定相続分の割合をベースとして分割しますが、亡くなった人が遺言書を残していた場合はそちらが優先されます。そこで今回は遺言書が見つかった場合の相続の流れや注意点について詳しく解説します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

相続が開始したら遺言書がないかを確認

遺言書の有無を確認する方法と種類について

相続が開始したら、まず、遺言書の有無を確認する必要があります。遺言書は単なる遺書ではなく、財産上のことを書いた書面になります。

遺言書は手軽にできる相続対策として近年注目されつつありますが、一方で遺言書を原因としたトラブルも発生していることに注意しなければなりません。というのも、遺言書は民法で一定の様式が定められていてそのルールに従ったものでないと有効な遺言書として扱われないからです。

民法で規定されている遺言書は次の3種類があり、それぞれ作成する際に注意点があります。

・自筆証書遺言

本人の直筆で作成する遺言書で、最も簡単に作成できますが、次の点が満たされていないと無効となります。

・作成した日の日付の記載がある。(吉日はNG)

・本人の直筆である。(法改正により一部パソコンで打ち出すことも可)

・署名捺印がある

遺言書を自分一人で作成する場合は、これらの点について漏れがないか慎重に確認する必要があります。また、相続が発生した際には検認という手続きが必要になりますが、詳しくは後程解説します。

・公正証書遺言

公証役場で作成する遺言書で、自分の希望する内容を公証人(裁判官のOBなど)に口頭で伝えるとそれを文章に起こしてくれます。専門家が作成してくれるので、不備が発覚することがなくとても安心ですが、相続財産の価額に応じて一定の手数料がかかります。

相続財産が高額な場合などは、公正証書遺言で作成することをおすすめします。

・秘密証書遺言

自筆証書遺言のように自分で作成した遺言書を公証役場に持ち込むことで、遺言書の存在だけを証明してくれるものです。パソコンで作成したものも有効ですが、公証役場で中身は確認しないため、不備が発覚するリスクは残ります。

このように遺言書ごとに特徴があるので、財産状況なども加味して適切な遺言書で作成することが大切です。

自筆証書遺言は家庭裁判所で検認を受ける

自筆証書遺言が見つかった場合には、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。検認とは、遺言書の改変を防止し、保存を確実にするために行われる手続きです。検認を受ける期限は明確には定められていませんが、相続開始を知った後もしくは遺言書を発見した後に遅滞なく行うべきとされています。

自筆証書遺言は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立ち会いがなければ開封できません。ただし、遺言書を開封したからといって相続における遺言が無効になるわけではないので、自筆証書遺言を発見したらできるだけ早く検認を受けるようにしましょう。

 

遺言書にもとづき遺言を執行する

遺言の執行とは?

遺言書は有効な相続対策ですが、どんなに完璧な遺言書を作成したとしてもその遺言書が自分の死後にきちんと実行に移されなければ意味がありません。このように遺言書を実行することを「執行」といい、執行を担当する人のことを「遺言執行者」といいます。

遺言書で指定できる事項には、それを実現するために何らかの行為を必要とするものとそうでないものがあり、前者については遺言の執行が必要になります。遺言執行者が決まっていないと、発見された遺言書を相続人全員で協力して実行していかなければならず、手続きが思うように進まない可能性が出てきます。

遺言を執行する人は誰?

遺言の執行は、遺言書で遺言執行者が指定されていれば遺言執行者が行いますが、指定が義務付けられているわけではないため、指定されていない場合には相続人が遺言書に記された内容を執行することになります。

また相続発生後に遺言執行者を決めたい場合、相続人や受遺者などの利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをして遺言執行者を選任してもらうことも可能です。

預貯金の相続手続きはどうなる?

遺言執行が必要な手続きには、預貯金の遺言書に基づく相続手続き(解約・名義変更)があります。預貯金の相続手続きでは、相続人全員が金融機関所定の書面に押印のうえ印鑑証明書を提出して手続きする必要がありますが、遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者単独で手続きできます。

なお、金融機関によっては、遺言書で相続人や受遺者が遺言執行者となっている場合には、遺言執行者単独での解約に応じてもらえず、相続人全員の印鑑が必要になることがあります。

不動産の相続登記はどうなる?

不動産の相続手続きとは、法務局で相続登記を行うことになります。通常の相続登記では、遺産分割協議書のほか相続関係を明らかにする戸籍謄本一式が必要になりますが、遺言書がある場合の相続登記では、遺言書のほかに必要となる書類が少ないので、手続きが簡便になっています。

遺言執行者が必須の行為

ここまでご紹介した内容は、必ずしも遺言執行者を必要としませんが、次の2つの行為については遺言執行者が必須となります。

・子どもの認知

死後に遺言書によって子どもの認知をしたい場合、手続きを行う遺言執行者が必ず必要です。

・相続人の廃除または廃除取り消し

一定の理由で相続人を廃除する手続きです。遺言書によって相続人の廃除やその取り消しを行いたい場合は、手続きを行う遺言執行者が必要になります。

これらの手続きは家庭裁判所において行うもので一般の人にとって大変なので、これらの内容を遺言書に書きたい場合は弁護士などの専門家に遺言執行者を依頼しておいたほうがよいでしょう。

 

遺言書がある場合の遺産分割協議

遺言書があれば通常は遺産分割協議不要

法定相続の場合には、相続開始と同時に相続人全員で相続財産を共有することになり、それを分けるための遺産分割が必要になります。遺産分割は、遺産分割協議と呼ばれる相続人全員の話し合いで行うのが原則となっています。

一方、遺言書で誰がどの財産を相続するかが指定されていれば、遺言書に記された相続の内容に優先的に従うことになりますから、遺産分割協議は必要ありません。しかし、被相続人が遺言書を残している場合でも、遺産分割協議が必要になることもあります。

たとえば、遺言書で一部の財産の相続方法しか指定していない場合、他の財産については遺産分割協議を行って相続方法を決める必要があります。また、遺言書で相続分のみしか指定していない場合には、具体的に誰が何を相続するかを遺産分割協議で決めなければなりません。

遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことも可能

被相続人が遺言書を残していても、遺言書の内容に従って遺産分割を行うことに相続人が納得できない場合もあります。このような場合、相続人全員が合意していれば、遺言書の相続に関する内容と異なる遺産分割を行うことも可能とされています。

ちなみに、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者が相続財産に対する管理処分権を有するため、理論上相続人は遺産分割の方法を決めることはできません。しかし、実務においては遺言執行者が同意していれば、相続人全員の合意により遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことは問題ないとされています。

 

まとめ

相続対策として遺言書を活用する人が増えてきていますが、同時に遺言書の不備や遺言執行者の指定がなされていなかったことで、かえってトラブルになる事例も出てきています。遺言書はただ書けばいいというものではないので、できるだけ弁護士などの専門家に相談の上ベストな遺言書を作成することを心がけましょう。

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