贈与・生前贈与 2017.12.16
生前贈与が遺産相続に与える影響とは?
親が持っている財産は、遺産相続が発生すれば子に移転することになります。一方で、遺産相続を待たずに財産を生前贈与するケースも多いと思います。ここでは、生前贈与が行われた場合に、遺産相続にどういった影響があるのかについて説明します。
生前贈与すれば遺産が減ることになる
遺産が減ると相続争いの可能性も減る
遺産相続の際には、相続人全員で遺産を分けることになります。生前贈与を行った場合、その財産は既に贈与を受けた人のものになっていますから、遺産相続の際に分ける必要がありません。遺産が多ければ相続人同士で争いになることもありますが、生前贈与すれば遺産の相続分が減ることになり、相続争いを防止できる可能性があります。
遺産が減ると相続税の負担が軽くなる
遺産相続時に基礎控除額を超える財産がある場合、相続税が課税されることになります。相続税は、遺産の額が多いほど高くなります。生前贈与を行えば、遺産の相続分の額を減らすことができますから、相続税の負担が軽減されることになります。
生前贈与を受けると特別受益者として扱われることがある
特別受益とは
遺産相続が発生して遺産分割を行う際には、原則として法定相続分で分けることになります。ただし、例外的に相続人の中に「特別受益」がある人がいれば、相続人間の公平を図るため、相続分を修正します。特別受益とは、被相続人から特別の利益を受けたことを意味します。特別の利益には、遺贈のほか、生前贈与のうち「婚姻・養子縁組または生計の資本」に該当するものが含まれます。
特別受益がある場合の相続分算定方法
たとえば、遺産の額が3,000万円、相続人が被相続人の長男と次男の2人、長男は被相続人から事業資金として400万円の生前贈与を受けているというケースで、長男の受けた生前贈与が遺産相続における特別受益となる場合には、相続分の算定は次のようにして行います。
(1) 長男が生前贈与を受けた400万円を相続財産に持ち戻し、みなし相続財産とします。
みなし相続財産=3,000万円+400万円=3,400万円
(2) みなし相続財産を法定相続分(2分の1ずつ)で分与します。
3,400万円×1/2=1,700万円
(3) 長男については、特別受益の400万円を差し引きします。
1,700万円-400万円=1,300万円
(1)~(3)より、長男の相続分1,300万円、次男の相続分1,700万円となります。
生前贈与した財産も遺留分の対象となることがある
遺留分とは
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に確保された最低限の相続割合のことです。直系尊属のみが相続人のケースでは遺産の3分の1、それ以外のケースでは遺産の2分の1が遺留分とされており、遺留分権利者のために確保されることになります。
なお、各相続人の具体的な遺留分は、上記の遺留分に法定相続分をかけたものになります。たとえば、相続人が被相続人の配偶者と子2人の計3人である場合、配偶者の相続分は2分の1、子の相続分は各4分の1ですから、遺留分は配偶者4分の1、子各8分の1となります。
遺留分算定の際には生前贈与も含まれる
遺留分は遺産に対する割合で考えることになりますから、遺留分を算定するためには、遺産の額を確定しなければなりません。ただし、遺留分算定の際には、遺産の額をそのまま基準にするわけではなく、遺産以外にも算定の基礎財産に含めるものがあります。遺留分算定の基礎財産は、次の計算式で算出します。
遺留分算定の基礎財産=相続開始時の財産+生前贈与した財産-債務
遺留分算定の基礎財産に含まれる生前贈与とは
上述のとおり、遺産相続の際には、生前贈与も遺留分算定の基礎財産に含まれます。ただし、生前贈与であれば無制限に遺留分算定の基礎財産に算入されるわけではありません。遺留分算定の基礎財産に含まれるのは、次のような遺産相続前の生前贈与になります。
①相続開始前の1年間にされた贈与
相続人に対して行われた遺産相続前の生前贈与のほか、相続人以外に対して行われた生前贈与も含めることになります。
②遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた贈与
生前贈与によって遺留分権利者の遺留分が侵害されていることを当事者双方が知っている場合には、相続開始前1年以内でなくても遺留分算定の基礎財産に含めることになります。
③不相当な対価でなされた有償処分
売買などの有償処分であっても、相当とはいえない少額の対価で譲り渡されており、当事者双方が遺留分権利者の遺留分を侵害することを知っている場合には、時期に関係なく、遺留分算定の基礎財産に含めることになります。
④特別受益としての贈与
相続人に対して行われた生前贈与が遺産相続における特別受益に該当する場合には、時期に関係なく、遺留分算定の基礎財産に含めることになります。また、この場合には、遺留分権利者に損害を加えることの認識も不要とされています。
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