贈与・生前贈与 2017.12.17

相続と生前贈与とではどちらを選んだらいい?

自分の財産を親族に譲りたい場合、自分が死亡したときに相続させる方法と、生前に贈与を行う方法の2つがあります。同じ財産を移転させるにしても、相続によるか生前贈与によるかで、扱いがずいぶん変わってきます。ここでは、財産を移転させる場合、相続と生前贈与のどちらがよいかについて考えてみます。

記事ライター:ゆらこ行政書士

相続のメリットとデメリット

相続税の方が税金の負担が軽い

相続は生前贈与に比べると、税金面でのメリットがあります。相続では相続税がかかり、生前贈与では贈与税がかかります。相続税と贈与税では、基本的に相続税の方が負担は軽く設定されています。

相続税には「3000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除枠が設定されており、たとえば相続人が1人の場合でも相続財産が3600万円以下なら一切課税されません。一方、贈与税では年間110万円を超えると課税対象になってしまいます。

また、不動産を生前贈与で取得すれば不動産取得税がかかりますが、相続で取得した場合には不動産取得税はかかりません。不動産の所有権移転登記の際にかかる登録免許税の税率も、贈与が2%あるのに対し、相続は0.4%となっています。このように、税金面をみると、相続の方が生前贈与に比べてお得になっています。

相続は時期や相手を選べない

相続では、財産をもらう人にとって、タイミングのよい時期にもらえるわけではありません。また、相続税は相続開始時点の評価額が基準となりますから、時期によって評価額が大きく変わるような財産は、税負担が大きくなってしまう可能性があります。

また、相続では、原則的に民法上の相続人(法定相続人)が財産を取得することになり、遺産分割協議で財産の分け方を決めることになりますから、争いになってしまいがちです。遺言により特定の人に財産を譲ることもできますが、法定相続人の中には「遺留分」という法律上保障された最低限の取り分のある人がいますから、100%好きなように財産を譲れるわけではありません。

 

生前贈与のメリットとデメリット

生前贈与をすれば相続税の負担を抑えられる

相続税の基礎控除額を超える財産がある場合、生前からの相続税対策は必須です。相続税の負担を抑えるためには、生前贈与が有効です。生前贈与をすれば、相続財産を減らすことができます。生前贈与により相続財産を基礎控除額以下にすれば、相続税を無税にすることも可能です。

生前贈与では時期や相手を選べる

生前贈与では、相続と違って時期や相手を選んで贈与を行うことができます。たとえば、子供が結婚して住宅が必要になったタイミングで贈与を行うということも可能です。また、将来値上がりするような財産であれば、早い時期に生前贈与を行うことで、節税になることがあります。

多額の贈与は贈与税の負担が大きくなる

生前贈与を行うと、贈与税が発生するというデメリットがあります。贈与税は相続税に比べて税率も高く設定されていますから、一度に多額の財産を生前贈与すると、贈与税の負担が大きくなってしまいます。

 

財産を賢く移転させる方法とは?

生前贈与を選ぶとメリットが大きくなる

相続はいつか必ず発生するものですから、ある程度の財産があるなら、生前から相続税対策をしておかなければなりません。相続の方が生前贈与に比べて税金が安いとはいえ、相続税の負担はできればなくしたいものです。

生前贈与には、時期や相手を選んで財産を移転させることができ、相続税の負担を軽減できるというメリットがあります。このような生前贈与のメリットを享受しながら、贈与税がかかるという生前贈与のデメリットをなくすには、贈与税の非課税枠や非課税特例を利用するのが有効です。

贈与税の基礎控除枠を利用して暦年贈与する

贈与税には年に110万円の基礎控除があり、贈与により取得した財産の額が年間110万円以下の場合には課税されません。贈与税の基礎控除枠を利用して少しずつ贈与を行えば、贈与税の負担なしに財産を移転することが可能です。

贈与税の非課税特例を利用する

贈与税には様々な非課税特例があります。たとえば、婚姻期間が20年以上の配偶者に居住用不動産またはその購入資金を贈与する場合には、配偶者控除により2,000万円までが非課税になります。

その他にも、住宅取得資金の非課税特例、教育資金の一括贈与の非課税特例、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例などがあり、要件に該当すれば1,000万~1,500万円程度の金銭を非課税で贈与することも可能になります。

相続時精算課税を利用する

相続時精算課税とは、贈与時に2,500万円までを非課税とする代わりに、相続時に贈与財産も含めて相続税を計算して精算する制度です。相続時精算課税では相続税の負担を減らせないこともありますが、贈与の時期を選んだり、財産の評価額を贈与時に固定させたりできるので、相続のデメリットを解消することが可能です。

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