贈与・生前贈与 2018.01.02

生前贈与と生命保険を活用しよう

財産を生前に子供や配偶者へ渡しておくことを、生前贈与と呼びます。生前贈与は、正しい知識を持って活用することで効果的な相続税対策となり得ます。

しかし生前贈与を検討していると、「生命保険に入っていると相続税対策になる」という話を耳にするかもしれません。生命保険も生前贈与と同じく、生前に行うことができる相続税対策のひとつです。

この記事では生前贈与について、また生命保険を活用した生前贈与について解説します。

記事ライター:棚田行政書士

生前贈与を活用して行う相続税対策

持っている財産をまだ生きているうちに譲ることが、生前贈与です。死後に財産を分配することは相続となり、相続税が課されます。この相続税を節税するためにも、生前贈与は有効です。

もちろん一定の金額以上の生前贈与には贈与税がかかりますが、1年に受贈者1人あたり110万円まで適用の基礎控除や、財産の種類と受贈者の条件がある種々の控除を利用することで、贈与税をかけずに生前贈与することも可能です。

夫婦間で居住用不動産を生前贈与する場合には最高で2,000万円、子供や孫の教育資金としての生前贈与では最高1,500万円、子供や孫の住宅取得資金としての生前贈与では最高で1,200万円と、高額な控除制度があります。

生前贈与について注意しておきたい点は、財産を譲った人が亡くなる前の3年間に生前贈与した財産は、一部の控除分を除き、相続財産とされて相続税を課されてしまうことです。

生前贈与にこのような規定がある理由は、相続税を払いたくないという理由で、駆け込みで生前贈与を行う人が増えてしまうと、相続税という税制そのものが無意味になってしまうためです。

まだ元気だからと思っていても、突然亡くなることも考えられます。生前贈与は、健康に問題が生じてからではなく、早い時期から行う方が効果的です。

 

相続税対策としての生命保険のメリットとは

生前贈与と同様、生きているうちにできる相続税対策には、生命保険があります。生命保険に加入している場合、相続税に関係する次の3つの点についてメリットがあります。

1.節税効果

生命保険の保険金には、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。この非課税枠を活用することで、相続税対策が可能です。非課税枠については、続く部分でさらに詳しく取り上げます。

2.納税資金対策

相続税額に見合った保険金額をあらかじめ設定して加入することで、相続時の納税資金として用意しておくことができます。

3.遺産分割資金対策

法定相続人は複数いるのに、相続財産として分配できる財産が単体の不動産しかない場合に、生命保険は有用です。

例えば、長男には不動産を相続させ、次男は生命保険金の受取人としておくなど、複数の法定相続人に公平に財産を分ける「代償分割」も、生命保険加入によって可能になります。

節税に対するメリットを生かせる保険の条件

このような生命保険の節税メリットは、どんな保険加入の仕方でも活かせるものではありません。次のような仕方で生命保険に加入することが必要です。

1.受け取る生命保険金が、相続税の対象となるように契約すること
2.保険料の支払いが可能な範囲で、非課税枠ギリギリまで保険をかけ、非課税枠を最大限利用する
3.定期保険では、万が一の時には保障が手薄になっていたり終了していたりする場合があるため、保障内容が一生涯変わらない終身保険を選ぶ

 

生命保険は遺産分割の対象外

生命保険の死亡保険金については、2つの側面があります。

その1:遺産分割の対象外

生命保険の死亡保険金については保険金の受取人固有の財産であると考えられているため、遺産相続が発生したとしても、相続人同士で遺産分割して分ける必要はありません。よって、受取人が遺産分割協議を待たずして、死亡保険金を自由に使うことができます。そのため、死亡保険金は相続税の納税資金としても重宝します。

その2:みなし相続財産

死亡保険金は遺産分割の対象外ではありますが、非課税枠を超えた部分については相続税が課税されます。この点を勘違いしている方が多いので注意しましょう。

なお、生命保険金の非課税枠について利用できるのは、法定相続人が取得した場合のみです。例えば、生命保険金の受取人を愛人に指定していた場合は、その死亡保険金には非課税枠の適用はありません。

 

まとめ

財産を分けるという生前贈与だけでなく、生命保険を活用した間接的な生前贈与も相続税対策には効果的です。財産が多い場合や、複数の法定相続人に対して相続財産分割が困難な場合など、生前贈与に加えて、生命保険加入による生前贈与も検討すると良いでしょう。

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