贈与・生前贈与 2017.10.04
生前贈与で損しない金額とは?
相続税の負担を減らすためには、相続財産を圧縮する必要があります。生前贈与を行うことで、相続財産を減らし、相続税対策になることがあります。ただし、生前贈与を行うと、贈与税が発生するリスクがあることを意識しておかなければなりません。ここでは、生前贈与で損しないためには、どれだけの金額を贈与すればよいのかについて考えてみたいと思います。
非課税贈与の基本は年間110万円以下の贈与
・基礎控除枠の範囲内なら贈与税はかからない
贈与税の負担なく生前贈与を行うために有効な方法は、贈与する金額を贈与税の基礎控除枠の範囲内にする方法です。贈与税は贈与額に税率をかけて算出しますが、贈与税の計算の際には、誰でも無条件で贈与額から差し引きできる110万円の基礎控除があります。つまり、贈与額が110万円以下であれば、贈与税はかからないことになります。
・暦年贈与で財産を少しずつ移転する方法がある
財産を持っている人にとっては、110万円の生前贈与といっても、たいした金額ではないように思うかもしれません。しかし、贈与税は1年ごとに計算しますから、110万円の非課税枠は毎年使うことができます。また、贈与税は、贈与者(贈与する人)ではなく受贈者(贈与を受けた人)ごとに課税されますから、贈与者は複数の受贈者に贈与することにより、さらに多くの金額を非課税贈与することが可能になります。
たとえば、贈与者が毎年4人に対し、1人あたり110万円を贈与していけば、1年で440万円、10年で4400万円を非課税贈与することができます。このように、毎年基礎控除枠を活用しながら贈与していく方法を暦年贈与といいます。生前贈与する場合には、まず、暦年贈与を有効に利用できないかどうかを考えてみましょう。
税金逃れと判断されないためにやっておきたいこと
・年間110万円以下でも課税されるケースがある
暦年贈与により財産を少しずつ非課税で譲り渡すときには、気を付けなければならない点があります。それは、毎年同時期に同じ相手にきっちり110万円を贈与しているようなケースでは、税務署に税金逃れと判断され、課税されてしまう可能性があるということです。
たとえば、毎年110万円ずつの贈与を10年間続けた場合、最初から1100万円を生前贈与するつもりであったと判断されることがあります。この場合には、1100万円という金額を基準に贈与税が課税されることになってしまいます。暦年贈与する場合には、一括して贈与したとみなされないような工夫が必要です。
・生前贈与するなら110万円よりも少し多い金額
暦年贈与により生前贈与するならば、毎年110万円よりも少し多い金額を贈与するのがおすすめです。贈与税は贈与額が大きくなるほど税率が高くなり最高で55%になりますが、基礎控除後の額が200万円以下であれば、税率は10%ほどです。
たとえば、115万円を贈与した場合には、贈与税としては5万円の10%の5000円を払えばよいことになりますから、それほど大きな負担にはなりません。贈与税の申告をして少額の贈与税を支払うことで、贈与による金銭の取得であることの証拠を残すこともでき、税金逃れを疑われる可能性も低くなります。
・贈与する時期や金額を変える
毎年同時期に同額を贈与すると、税金逃れと判断されやすくなってしまいます。毎年贈与を行う場合には、贈与する時期を変えたり、贈与額を変えたりした方がよいでしょう。
・贈与契約書の作成
生前贈与を行うときには、贈与契約書を作成しておくことが重要になります。贈与契約書には、生前贈与する金額や日付を明確に記載したうえで、贈与者、受贈者それぞれが署名捺印しておきましょう。できれば、実印で押印し、公証役場で確定日付を取っておくとさらに安心です。
生前贈与と相続とでどちらが得になるか
・生前贈与で相続より得する金額は?
生前贈与する金額としていくらが妥当かは、贈与時にかかる贈与税と相続時にかかる相続税を比較して考えなければなりません。贈与税と相続税の課税の仕方は同じではなく、所有している財産の額や相続人の数によっても損得の分岐点は変わってきます。
贈与税の税率は相続税の税率より高くなっていますが、贈与税にはまとまった額が非課税になる特例等(配偶者控除、住宅取得資金贈与の特例、教育資金の一括贈与の特例、結婚・子育て資金の一括贈与の特例)も設けられています。こうした特例が利用できるかどうかによっても、生前贈与で得するかどうかが変わってきます。
・専門家に相談して検討を
相続より生前贈与を選んだ方がよいのか、また、生前贈与の金額としていくらが適当かは、ケースバイケースの判断が必要になります。節税対策は、税理士等の専門家に相談して検討するのがおすすめです。
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