贈与・生前贈与 2017.10.04

生前贈与を現金で行う際の注意点

相続税対策のため生前贈与を考えることは多いと思います。生前贈与を現金で行う場合、気を付けておかなければ節税効果がなくなってしまうことがあります。ここでは、生前贈与を現金で行う際に注意しておきたい点についてまとめています。

記事ライター:ゆらこ行政書士

生前贈与と相続ではどちらがおすすめ?

自分の所有している財産は、ゆくゆくは家族のものになります。相続まで待った方がいいのか、生前贈与した方が得なのか、悩む人も多いのではないでしょうか?

相続にするか生前贈与にするかで、かかる税金が変わってきます。財産を目減りさせないために、できるだけ節税になる方法を考えるべきでしょう。

贈与税と相続税を組み合わせることで節税になる

生前贈与をすれば、財産をもらった人に贈与税がかかります。財産の相続でも、財産をもらった人に相続税がかかります。

課税価格が同一の場合、贈与税と相続税を比較すると、贈与税の方が税率は高くなっています。ただし、相続税には3000万円を超える基礎控除があり、課税価格は大きく減ります。相続税には、配偶者の税額軽減など、税金を大きく減らせる特例も設けられています。

だからと言って、全ての財産を相続まで持ち続けていた方が得とは限りません。贈与税にも、非課税枠や非課税特例が設けられています。生前贈与と相続を組み合わせることで、節税効果を高めることができます。相続税対策をしたいなら、生前贈与も視野に入れておきましょう。

亡くなる前3年以内の生前贈与は相続税の課税対象

生前贈与は、原則的に贈与税の課税対象です。しかし、亡くなる前3年以内に行った生前贈与については、相続財産に加算され、相続税の課税対象になります。寿命が残りわずかになってから生前贈与を行っても、相続税対策はできないこともあることも知っておきましょう。

遺産が基礎控除額以下なら相続税はかからない

手持ちの財産をすべて相続により親族に引き継がせるよりも、生前贈与を組み合わせた方が節税になるケースは多くなっています。しかし、そもそも相続税がかからないケースでは、わざわざ生前贈与をする必要はありません。相続まで待っていれば、贈与税も相続税も払わずにすみます。

相続税がかかるかどうかは、遺産の額が基礎控除額を超えているかどうかで決まります。手持ちの財産が以下の計算式で出される基礎控除額以下であれば、相続税はかからないので、相続税対策としての生前贈与を考える必要はありません。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

生前贈与はやり方に注意

生前贈与すれば、相続財産を減らして相続税を軽減できます。生前贈与には贈与税がかかりますが、贈与税を抑える方法で生前贈与をすれば、贈与税も相続税も減らせることになります。

相続税対策に有効な生前贈与ですが、やり方を間違えると効果が薄くなってしまうことがあります。特に注意しておかなければならないのが、現金を贈与する場合です。現金には名前が書いてあるわけではありませんから、出入りの証拠を残しておかなければ課税上も不利になってしまうことがあります。以下、生前贈与を現金で行う際に気を付けておかなければならない点を説明した上で、節税効果を高める生前贈与の方法をご紹介します。

 

生前贈与で現金を手渡ししても大丈夫?

・現金の手渡しは証拠が残らない

相続税対策の生前贈与では、現金が相手に贈与された証拠を残しておく必要性が高くなります。生前贈与した相手が現金を持っているだけなら、借りたお金なのかもらったお金なのかもわかりません。現金の手渡しは証拠が残りにくいので、できるだけ避けた方が無難です。

・少なくとも贈与契約書は作成しておく

やむを得ず現金を手渡しで贈与する場合には、必ず贈与契約書を作っておきましょう。贈与契約書を作成することで、贈与の証拠を残すことができます。贈与契約書を公証役場に持って行って確定日付を取っておけば、その日付の時点で契約書が存在したことの証明になります。

 

生前贈与した現金を預金口座に入金する場合には?

・振込なら現金の手渡しよりも安心

現金を生前贈与する場合には、手渡しよりも預金口座を利用した方がよいでしょう。預金口座から引き出した現金を手渡ししたのでは、贈与の証拠が残りません。自分の預金口座から相手の預金口座に振込することで、明確な証拠を残すことができます。

・名義預金は贈与にならない

親が子どもの預金口座に振込していても、実質的に親がその預金を管理している場合には、親が子どもの名義を借りて預金しているものとみなされてしまいます。このような預金は、名義預金と呼ばれます。名義預金は贈与にならず、親の財産とされて相続税の課税対象となってしまいます。

・預金口座に入金する場合の注意点

親が子どもに生前贈与する現金を預金口座に入金する場合には、名義預金とされないよう、次のような点に気を付けておく必要があります。

①カードや通帳は子どもが管理

贈与というためには、贈与を受けた人がその現金を自由に使える状態でなければなりません。親が子ども名義の預金口座の通帳やカード、印鑑などを管理していれば、子どもは自由にその預金を引き出して使うことができませんから、贈与といえなくなってしまいます。

②子どもが自分で開設した預金口座に入金

親と子が離れて住んでいる場合、親の住所近くの支店の口座に入金すれば、親の財産とみなされる可能性が高くなります。子ども自身が開設した子どもの住所近くの支店に入金するのがおすすめです。

③贈与契約書を作成

預金口座を利用して現金の贈与を行う場合にも、贈与契約書を作っておくと安心です。贈与契約書を作成することで、名義預金ではなく贈与であることを明確にすることができます。

 

生前贈与の節税効果を大きくするには?

相続税対策のために現金を生前贈与するなら、金額や方法に注意しておきましょう。以下、生前贈与の節税効果を大きくする方法について説明します。

・年間110万円以内にする

贈与税は1年ごとに課税される税金ですが、毎年110万円の基礎控除があります。贈与額を年間110万円以下にすれば、贈与税なしに生前贈与ができます。

110万円の非課税枠を利用して毎年贈与を行う方法を暦年贈与と言います。暦年贈与を利用して何回かに分けて贈与すれば、110万円を超える金額も非課税で贈与できることになります。

・毎年贈与するなら贈与額や贈与時期を変える

たとえば、年間100万円の贈与なら基礎控除枠内なので非課税です。しかし、毎年同じ時期に100万円の贈与を10回行った場合、1000万円を分割して贈与したものとみなされ、1000万円について贈与税が課されてしまうことがあります。このような贈与は、連年贈与や定期贈与と呼ばれ、課税対象となるからです。

基礎控除枠を活用して非課税贈与をする場合には、連年贈与とみなされないよう、贈与額や贈与時期を毎年変えるのが安心です。また、毎回贈与契約書を作成し、別々の贈与であることの証拠を残しておくとよいでしょう。

・子や孫の生活費や教育費として贈与する

夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものについては、贈与税はかかりません。子や孫に必要な金額を必要な都度渡すのであれば、基礎控除枠を超えていても非課税で贈与できます。

たとえば、孫の習い事の月謝、高校や大学の授業料、教材費などを払った場合には、贈与税はかかりません。ただし、受け取った孫がそのお金を使わず預金した場合には、贈与税の課税対象になってしまいます。生前贈与した現金が目的どおり使われたことの証拠を残すためには、学校などの支払先に直接振り込んだ方がよいでしょう。

・非課税特例を利用して子や孫へ贈与する

子や孫へ現金を贈与する場合、受け取った側が使う目的によっては以下のような非課税特例が利用できることがあります。特例が利用できれば、1000万円単位の現金でも非課税で贈与できます。

①住宅取得資金の非課税特例

最大3000万円(※時期等により変わる)が非課税になります。

②教育資金の一括贈与の非課税特例

最大1500万円が非課税になります。

③結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例

最大1000万円が非課税になります。

 

まとめ

生前贈与をすれば、相続財産を減らして相続税を軽減できる可能性があります。ただし、生前贈与には贈与税がかかります。贈与税の非課税枠や非課税特例を活用し、贈与税がかからない方法で生前贈与をするのがおすすめです。

生前贈与を現金で行う場合には、お金の出入りの証拠を残しておくことも重要です。贈与契約書を作っておくことも忘れないようにしましょう。

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