贈与・生前贈与 2019.06.27
生前贈与のメリット・デメリットと税金について
相続税対策として、生前贈与の有効性は広く認知されています。しかし生前贈与は、注意点やデメリットを十分理解しておかないと、相続開始後に思わぬ混乱を招く可能性もあるものです。
被相続人と相続人の双方にとって本当に有意義な仕方で生前贈与を行うために、生前贈与のメリット・デメリットや、税金面について確認してみましょう。
生前贈与のメリット・デメリット
まず、生前贈与のメリットとデメリットを比較してみます。最初に、メリットを見てみましょう。
1.被相続人の意思を確実に反映できる
生前贈与では、被相続人が生きているので、すべて自分の思い通りに動かすことができます。財産を贈る時期や金額、財産の種類や受け取る相手も指定できるのは大きなメリットでしょう。
2.上手な生前贈与は節税効果大
続きの部分で詳しく解説しますが、贈与には贈与税という税金がかかります。
しかし、毎年一定額以下の生前贈与は税金をかけずに行える制度や、生前贈与する相手次第では高額の生前贈与も税金をかけずに行える特例があるので、相続まで財産を保有している場合と比較すると、税金面で大きな節税効果をもたらす場合もあるでしょう。
ここからは、デメリットを3つ見てみましょう。
1.相続税より贈与税が高くなるケースも
生前贈与によって税金の節税効果を得られるのは、多くの場合、現金の贈与を行う場合です。不動産を生前贈与したいと思う人もいますが、生前贈与によって不動産を取得する人は、名義変更のための費用や各種税金を負担しなくてはなりません。
場合によっては、相続開始後に不動産を相続し相続税を支払った方が安く済むこともあるので、注意が必要です。
2.相続開始前3年以内の生前贈与は無効になる
駆け込み贈与による税金逃れを防止するため、相続開始前3年以内の生前贈与は無効になります。その間に生前贈与した財産はすべて相続財産に組み込まれ、生前贈与自体が無かったことになってしまうため、注意しましょう。
3.相続開始後に相続人同士のトラブルを生む可能性
相続人全員に同じ金額の生前贈与をしておくのなら話は別ですが、誰か一人にだけ生前贈与したいという場合は、相続トラブルのリスクが生じます。
誰にどんな生前贈与をしようと、それは被相続人の自由です。しかし、相続開始後は、相続人同士が相続財産を巡って争う可能性が大いにあります。
生前贈与を受けている相続人と受けていない相続人との間では、不公平感からトラブルが生じやすくなるでしょう。
生前贈与にかかる贈与税の計算
ここで、贈与税という税金がどれほどかかるのかを表で確認しておきしょう。
基礎控除後の課税価格 | 2014/12/31まで | 2015/1/1から | |||||
直系尊属からの贈与 | 左記以外からの贈与 | ||||||
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | ||
200万円以下 | 10% | 無し | 10% | 無し | 10% | 無し | |
200万円以上300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 | |
300万円以上400万円以下 | 20% | 25万円 | 20% | 25万円 | |||
400万円以上600万円以下 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 | 30% | 65万円 | |
600万円以上1,000万円
以下 |
40% | 125万円 | 30% | 90万円 | 40% | 125万円 | |
1,000万円以上1,500万円以下 | 50% | 225万円 | 40% | 190万円 | 45% | 175万円 | |
1,500万円以上3,000万円以下 | 45% | 265万円 | 50% | 250万円 | |||
3,000万円以上4,500万円以下 | 50% | 415万円 | 55% | 400万円 | |||
4,500万円以上 | 55% | 640万円 |
2015年からは特例税率が設けられています。直系尊属からの贈与で、贈与を受けるのが20歳以上の人であることが条件です。
生前贈与の注意点
生前贈与で肝心なのは、実際に相続が開始した後に、生前贈与の事実を税務署に認めさせることです。生前贈与をする際の注意点を、2つ確認しておきましょう。
1.双方の合意を示す「贈与契約書」の作成が必須
生前贈与は、財産を贈る人と財産をもらう人の双方が贈与に合意していなければならず、合意のない一方的な生前贈与は認められません。
贈与契約書は必ず作成しておきましょう。贈与の時期、贈与する財産の内訳と金額、贈与者と受贈者の住所氏名などを記載した書面を作成します。
これにより、双方の合意を証明すると共に、どの財産が生前贈与されたのかを誰の目にも明らかにすることができるでしょう。
2.暦年贈与は税務署の目を意識する
一人の相手につき、毎年110万円までは贈与税非課税で生前贈与できる、暦年贈与という制度があります。
この制度を利用して毎年少しずつ贈与すれば税金がかからないと考える人もいますが、注意が必要です。
例えば、10年に渡り1,100万円を贈与する計画を立てたとします。1年に110万円ずつの生前贈与は確かに暦年贈与の範囲内ですが、同じ金額を毎年贈与していると、贈与税が課せられる可能性があります。
税務署からすれば、最初から1,100万円全額を贈与するつもりでいて、ただ分割支払いをしていただけだろうという見解になるのです。
この点でトラブルを起こさないためには、贈与する金額や日付を毎年変えること、贈与の度に贈与契約書を取り交わすなどの工夫が必要になります。
また、あえて若干基礎控除額を上回る贈与をして、少しだけ税金を納めて記録に残すという手段も有効です。
まとめ
生前贈与は、失敗してしまうと余計な税金を支払わなければならなかったり、相続開始後のトラブルの原因になったりします。万全を期すためには、専門家に相談しつつ検討していくことをおすすめします。
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