贈与・生前贈与 2019.07.09
生前贈与手続きの流れやポイント、特例制度について
相続開始後にトラブルが起きないように、また相続税をできるだけ抑えることができるようにと、生前贈与に関心を持つ人が増えています。
自分の相続について、被相続人となる人が生前によく準備しておくならば、相続人の苦労や税負担を大幅に抑えることが可能です。税金面については、ゼロにできる可能性さえあります。今回は、生前贈与手続きの流れや生前贈与に利用できる特例制度についてのご紹介です。
生前贈与手続きの流れ
生前贈与の手続きに着手する前に、まずは生前贈与の基本的なポイントや流れを確認しましょう。
1.贈与者と受贈者、双方の意思を確認
大前提として、生前贈与は財産を譲る「贈与者」と財産を受ける「受贈者」の間に、合意がなくてはなりません。生前贈与のつもりで、親が子ども名義の預金をしていたという事例がよくあります。
子どもが社会人になったり、結婚したりした時に渡してあげようというサプライズプレゼントのような目的で預金している場合、子どもがその存在を知っている可能性は低いでしょう。
このようなケースは受贈者の合意がないことになるため、生前贈与とはなりません。子ども名義の預金を持ったまま親が亡くなれば、相続開始後には相続財産の一部とされてしまいます。生前贈与手続きの前に、財産をあげたいと思っている相手に意思確認をしましょう。
2.贈与税の税額の試算
検討している生前贈与を実行したとしたら、贈与税はどれほどかかるのかも確かめておくべきです。場合によっては、生前贈与ではなく、通常の相続手続きで相続税を支払った方が税負担を軽減できるケースもあります。
3.必要書類を揃える
生前贈与手続きには、贈与者の印鑑証明や受贈者の住民票など、当事者の身元を証明する書類が必要です。生前贈与される財産の種類によっては、手続きの際に登記済証なども必要になる場合があります。
4.贈与契約書の作成
贈与契約書を作成することで、贈与した証拠とします。これにより、贈与者は受贈者に無償で財産を譲渡する法的な義務を負うこととなるのです。
契約など不要と考える人もいますが、贈与契約書無しに生前贈与したことで、相続開始後に生前贈与が認められないケースは少なくありません。
そうなると受贈者は相続できる財産を制限されるなど、不利な状況に追い込まれる可能性があります。受贈者のために、生前贈与手続きの際には贈与契約書をきちんと作成しておきましょう。
5.名義変更や登記手続きを完了する
生前贈与した財産が不動産や自動車、株式などであれば、受贈者の名義に変更する手続きや登記手続きも必要になります。
生前贈与で現金を贈りたい場合に使える特例制度
基礎控除がほとんどない贈与税ですが、金額的な条件や贈与財産の用途を限定した特例制度はいくつか存在しています。ここで3種類をご紹介しましょう。
暦年課税贈与
受贈者1人当たり、1年に110万円までなら贈与税がかからない、というものです。上限額が低いのがデメリットですが、現金以外の財産にも適用されるため、工夫次第で大きな節税効果が期待できます。
結婚・子育て資金の贈与
当初は2019年3月31日までの期間限定でしたが、2019年の改正により2年間の延長が決定した特例です。
親や祖父母から結婚や子育てにかかる費用を援助してもらう場合、1,000万円までを非課税とすることができます。ただし、結婚費用については300万円までという上限がありますので注意しましょう。
なお、改正により、前年度の合計所得が1,000万円を超える受贈者には適用されないこととなりました。
教育資金贈与
結婚・子育て資金の贈与と同様、2019年の改正で2年間の延長が決定している特例です。親や祖父母から30歳未満の子どもや孫への生前贈与について、学校等の費用について1,500万円まで、習い事については500万円までを非課税で贈与できるという特例でした。
改正によって大きく変わるポイントは、以下の3点になります。
・受贈者の前年度合計所得が1,000万円以下であること
・受贈者が23歳以上になってからの学校等費用以外の支払いは適用対象外
・相続開始前3年以内になされた贈与の残額は、受贈者の相続財産とされる
生前贈与で住宅や土地を贈りたい場合に使える特例制度
住宅取得資金贈与
親や祖父母から住宅新築・購入費用の援助を受ける場合に、最大で3,000万円が非課税となる制度です。なお、住宅の増改築のための費用は最大1,500万円とされています。
受贈者についての条件および対象となる住宅についても、非常に細かい条件が付けられているため、適用の可否については専門家に問い合わせた方が良いでしょう。
現時点で、2021年12月31日までの期間限定制度となっています。
配偶者への自宅の贈与
20年以上法律上の婚姻をしている配偶者へ、自宅の土地建物または住宅購入のための費用として、2,000万円を上限に非課税で生前贈与できるという特例です。
2018年に改正され、この生前贈与については相続開始後も持ち戻しの必要がないこととされました。自宅を生前贈与された配偶者でも相続財産の取り分に影響はしないということになり、安心して利用できる特例制度となっています。
まとめ
生前贈与手続きは、無理のない範囲で早めに始めることがポイントです。あまり高齢になってからでは、せっかく手続きしても意味がなくなってしまう生前贈与もあります。
生前贈与で利用できる特例制度の手続きについては、適用条件が細かく定められているため、専門機関に相談してから手続きするようにしましょう。
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