遺言 2018.01.14
遺言で生命保険金の受取人変更はできる?
生命保険に加入している人ならば、自分が亡くなったときに支払われる生命保険金の受取人の変更をしたいと思うこともあるでしょう。ここでは、遺言により生命保険金の受取人変更ができるかどうかという問題について説明します。
遺言による生命保険金受取人変更の可否
・生命保険金の受取人を変更する方法
生命保険に加入するときには、保険金の受取人を指定して保険契約を締結します。しかし、様々な事情から、契約後に受取人を変更したいと考えることはあり得ると思います。生命保険の契約後に、保険金の受取人変更を行うことは可能です。この場合、保険会社に申し出て、各社で定められている手続きをとる必要があります。
なお、生命保険金の受取人変更には、被保険者の同意が必要です。契約者と被保険者が違う場合、被保険者の同意が得られなければ、受取人変更ができません。
・新保険法では遺言による受取人変更が可能とされている
自分が亡くなったときの財産の処分方法や身分上のこと(認知など)、相続人の廃除などの事項は、遺言で指定できる旨が民法に定められています。しかし、遺言で生命保険金の受取人変更ができるかどうかについては、以前は法律に明確な規定がなく、判例や学説でも見解が分かれていました。
平成22年4月1日に施行された保険法では、「保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる」(44条1項)という規定が設けられています。そのため、平成22年4月1日以降に締結された生命保険契約については、問題なく遺言による保険金受取人変更ができることが明らかになりました。
一方、保険法施行前の生命保険契約について、遺言による保険金受取人変更ができるかどうかは、各保険会社で対応が違っています。遺言による保険金受取人変更を考えている場合には、事前に保険会社に問い合わせをして確認しておきましょう。
遺言による生命保険金受取人変更の方法と手続き
・遺言で生命保険金の受取人変更をする場合の書き方
遺言で生命保険金の受取人変更をする場合には、「遺言者は、下記生命保険契約にもとづく生命保険金の受取人を長男山田太郎(昭和○○年○○月○○日生)に変更する。」等と記載し、保険証券を見ながら保険契約の表示(保険証券番号、契約日、種類、保険期間、保険金額、保険者、契約者、被保険者)を記載します。
・遺言者が死亡した後の保険金受け取りの手続き方法
亡くなった人が保険金の受取人を変更する旨の遺言を残している場合、相続人または遺言執行者が保険会社に連絡をして、保険金受け取りの手続きをすることになります。手続き方法については、各保険会社で確認する必要があります。
遺言で生命保険金の受取人変更をする場合の注意点
・タイミングにより元の受取人に保険金が支払われてしまうことがある
保険法44条2項では、「遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない」とされています。
相続人や遺言執行者が保険会社に連絡する前に、契約上の受取人が保険金請求の手続きをした場合には、保険会社は契約上の受取人に保険金を支払います。その後に遺言により変更された受取人が保険金の請求をしても、保険会社は二重に払ってはくれません。
・元の受取人が保険金を受け取ったら話し合いでの解決が必要
亡くなった人が遺言で保険金の受取人変更の意思表示をしている場合でも、遺言の発見が遅れたり、手続きを後回しにしたりしていると、元の受取人に保険金が支払われ、変更後の受取人が保険会社から保険金を受け取れないことがあります。そうなった場合、保険会社は関与しませんので、元の受取人と変更後の受取人の間で、話し合いによる解決を図る必要があります。
相続発生後の遺産分割の場面では、ただでさえ感情的な問題で話し合いがスムーズに進まないことが多いですが、遺言による保険金の受取人変更があったことで、さらに話し合いが難航する可能性があります。特に、元の受取人が受け取った保険金を既に使ってしまった場合などは、トラブルが大きくなってしまいます。
・遺言で受取人変更するなら遺言執行者を指定しておく
生命保険金の受取人変更をする場合、生前に保険会社に連絡をとって手続きをすると家族に知られてしまうため、遺言で受取人変更をしたいと考えることもあると思います。しかし、遺言で生命保険金の受取人変更をすれば、相続人の間でトラブルになる可能性が高くなってしまいます。生命保険金の受取人変更は、できるだけ生前に手続きした方がよいでしょう。
なお、どうしても遺言で生命保険金の受取人変更をしたいという場合には、遺言執行者を指定しておき、相続開始後スムーズに保険会社での手続きができるようにしておくのが安心です。
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