遺言 2018.06.09
遺言の時効と遺留分減殺請求権の時効
相続時には遺言がないものとして遺産分割協議で遺産を分配したけれど、その後何年も経ってから遺言が発見されるケースがあります。故人の死後、年数が経過してから遺言が出てきたとき、「遺言はもう時効になっているのではないか?」と考えることもあるでしょう。ここでは、遺言の時効と、遺言相続で気を付けたい遺留分減殺請求権の時効について説明します。
遺産分割協議の後で遺言が発見された場合
相続ではどうやって遺産を分配する?
相続の際には、亡くなった人が遺言を残しているかどうかで、遺産をどう分けるかが変わってきます。遺言がある場合には、故人の意思を最大限に尊重し、遺言に従った遺産分配を行います。一方、遺言がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行って、遺産の分配方法を決めることになります。
遺産分割協議後に発見された遺言に効力はある?
故人の遺言はないものと思い、遺産分割協議を行ったけれど、後になって遺言が発見されるケースもあります。遺産分割協議が既に終わっている場合でも、被相続人が残した遺言の効力がなくなるわけではありません。遺言が見つかったら、遺産分配をやり直すのが原則になります。
なお、故人が遺言を残している場合でも、相続人全員の合意により、遺言と異なる遺産分割を行うことは可能と考えられています。遺産分割協議後に遺言が発見された場合でも、相続人の中に異議を唱える人がいなければ、既に行われている遺産分割を有効として扱うこともできます。
遺言には時効がない
死後年数が経ってから遺言が発見されたら?
相続時に遺産分割協議を行って相続手続きをすませた後、何年も経過してから遺言が発見されることもあります。相続から遺言発見までにかなりの年数が経っていれば「遺言はもう時効になっているのでは?」と考えることもあると思います。
しかしながら、法律上、遺言の時効というのはありません。死後年数が経ってから発見された遺言も、時効にはなっておらず、有効な遺言ということになります。
遺言が時効にならないなら、遺産分配のやり直しも必要?
遺言には時効がないので、故人の死亡から何年経っていても、遺言が発見されたときには遺産分配のやり直しができることになります。
相続人全員が「既に行われている遺産分割のままでよい」と合意できればそれでもかまいませんが、1人でも反対する人がいれば、遺産分配のやり直しをせざるを得なくなってしまいます。
相続から年数が経過してから遺言が発見されたときには、相続人間で紛争が起こる可能性が高くなります。遺言には時効がありませんから、古い遺言が発見された場合にも、弁護士に相談して対処方法を考えた方がよいでしょう。
遺言があるときには遺留分減殺請求の時効に注意
遺留分減殺請求権は時効に注意
遺言に関連して問題になる時効は、遺留分減殺請求権の時効です。遺留分減殺請求権とは、遺留分が侵害されている場合に、遺留分の返還を求める権利です。
たとえば、相続人が被相続人の長男と次男の2人である場合、長男、次男はそれぞれ4分の1の遺留分をもっています。被相続人が長男に全財産4000万円を相続させる旨の遺言を残している場合、次男は遺留分減殺請求を行って、自己の遺留分である1000万円の返還を長男に求めることができます。
遺留分減殺請求の消滅時効
民法では、遺留分減殺請求権の時効について規定されています。遺留分減殺請求権の時効は、相続開始と減殺すべき贈与・遺贈があったことを知ったときから1年間となっています。
時効の起算点は、単に贈与や遺贈があったことを知っているだけでなく、それが遺留分を侵害するものであることを認識したときとされています。遺留分減殺請求の時効は「消滅時効」であるため、時効の起算点から1年経つと遺留分減殺請求権は消滅することになります。
遺留分減殺請求の除斥期間
民法では、相続開始から10年を経過したときにも、遺留分減殺請求権が消滅する旨が定められています。遺留分をもつ相続人は、たとえ被相続人が亡くなったことを知らなくても、被相続人の死後10年以上経っていれば、遺留分減殺請求はできません。
遺留分減殺請求権が消滅する10年という期間は、法律上は消滅時効ではなく「除斥期間」という扱いになります。除斥期間は、時効のように中断したり、援用が求められたりはしません。被相続人が亡くなった日から10年が経過すれば、自動的に遺留分減殺請求権は消滅することになります。
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