贈与・生前贈与 2017.12.13
相続前3年以内の贈与に注意
相続税対策として生前贈与を検討する場合は、相続開始前「3年以内の贈与」に注意する必要があります。相続開始前3年以内の贈与財産には、相続税を課されてしまうためです。
この記事では、相続開始前3年以内の贈与に関する詳細、また3年以内の贈与財産のうち相続税課税対象となる範囲、ならない範囲について説明していきます。
なぜ3年以内の贈与に注意が必要か
贈与は、贈与者が生存している間に行われます。しかし贈与者が亡くなると、その時点から相続開始となります。
贈与者が亡くなった日から過去3年以内の贈与財産は相続税の対象として遡られ、その3年以内の贈与は違った取り扱いをします。具体的には、3年以内の贈与財産はすべて相続財産と見なされ、相続税の課税対象財産とされるのです。
例えば、平成26年5月から生前贈与を始めた人が、ちょうど3年後の平成29年5月に亡くなったとします。この場合、平成29年5月の時点から過去3年を遡り、平成26年5月から平成29年5月までの3年以内の贈与については、相続税の加算対象額と見なされてしまいます。
3年以内の贈与に関する相続税のルールは、相続税を免れるために命の危険が迫ってから慌てて生前贈与をする人が増えることで、相続税額が減少してしまうことを防ぐ目的で導入されました。
相続税課税対象となる財産の範囲とは?
相続税計算時に加算されるのは、相続開始前3年以内の贈与財産です。贈与税には受贈者1人当たり年間110万円以内の贈与は基礎控除とする規定がありますが、相続税の計算では3年以内の贈与の中の、この基礎控除内の贈与についても加算対象となります。
一方、相続税の課税対象とならない贈与財産もあります。相続開始前3年以内の贈与財産であっても、贈与税の配偶者控除や住宅取得資金の贈与など特例控除の対象となる生前贈与財産については、相続税課税対象の財産には加算されません。
これらの贈与を3年以内の贈与の相続税課税対象としないためには、これらの贈与に関して贈与税の申告を済ませておくことが必須となります。
3年以内の贈与に対し、すでに支払った贈与税はどうなる?
相続開始前3年以内の贈与の場合、贈与税の基礎控除額に対しても相続税が課されてしまうのでは「税金の二重取り」になるのでは?と思われるかもしれません。もちろん、すでに支払った贈与税は後に課税される相続税から差し引かれて納税することとなります。
例えば、相続開始前3年以内の贈与財産に対してすでに100万円の贈与税を支払っており、贈与者死亡後に相続が発生して相続税が400万円とされた場合には、すでに支払った贈与税100万円は控除され、支払うべき相続税は300万円となります。
ただし、相続開始前3年以内の贈与財産に対してすでに支払った贈与税の方が相続税よりも高額だった場合、相続税計算時に贈与税の控除は行われますが、マイナスとなってしまった金額については還付されません。この点も留意しておく必要があります。
3年以内の贈与でも相続税課税対象外になるケース
3年以内の贈与であっても、法定相続人でない人への贈与は相続税の課税対象とはなりません。法定相続人でない人とは、子供の配偶者である婿や嫁、孫などが該当します。
例えば、贈与者が亡くなる数日前に子供の嫁に110万円を贈与した場合には、その110万円は3年以内贈与とは見なされず非課税となるのです。
法定相続人でない人への3年以内の贈与における留意点
1.遺言書によって孫などに財産を遺贈する場合
贈与者の遺言書に、孫や婿・嫁などへ財産を譲る旨の内容が記されている場合には要注意です。それら財産を譲り受ける立場の人は、法定相続人と同じように3年以内の贈与財産について相続税加算の対象と見なされます。
2.孫などが生命保険の受取人になっている場合
生命保険の受取人が、孫など法定相続人でない人になっている場合です。この場合にも、受取人は法定相続人と同じように見なして相続財産として扱われ、相続税の対象となります。
このように、相続開始前3年以内の贈与は相続財産と見なされてしまい、相続税の課税対象とされます。
しかし孫や婿・嫁などへ贈与した財産は、原則として3年以内の贈与であっても相続財産とは見なされません。
加えて、住宅取得資金の贈与や配偶者への贈与など、贈与税の特例控除を利用した贈与も相続財産には加算されません。
若干複雑ですが、相続税の計算にあたっては非常に重要な要素ですので、必ず覚えておきましょう。
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